2020 Fiscal Year Research-status Report
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19K01736
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Research Institution | Prefectural University of Kumamoto |
Principal Investigator |
河西 卓弥 熊本県立大学, 総合管理学部, 准教授 (20516992)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | M&A / 研究開発投資 / イノベーション |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、M&Aと研究開発やイノベーション活動との関係を実証的に分析することである。企業のM&Aは、当該企業のその後の研究開発やイノベーション活動に、どのような影響を与えるのかという問いに対しては、相反する2つの仮説が存在する。1つ目は、replacement effectと呼ばれるもので、この仮説に基づくと、M&Aにより企業は研究開発投資を控えたり、新製品や新技術の開発といったイノベーション活動を低下させたりすると予想される。2つ目は、rent dissipation effectと呼ばれるもので、この仮説に基づけば、M&Aにより研究開発投資を増加させたり、イノベーション活動を活発化させたりすることが予想される。 本年度は、経営者による自社の買収であるマネジメント・バイアウト(MBO)、その中でもMBO時に株式を非公開化する非公開化型MBO案件を対象に、株式市場からの退出が企業のイノベーション活動に与える影響の実証的な検証を試みた。非公開化型MBO実施企業とそれら企業に近い属性を持った企業をマッチングしたパネルデータを、回帰分析を用いた差の差分析(difference-in-differences; DID分析)により、株式の非公開化によりイノベーション活動が促進されるのか否かを実証的に検証した。その結果、MBO企業全体を対象とした分析では、株式非公開化によるイノベーション活動への有意な影響は見られなかった。しかし、事前の負債比率が低く、MBOにより負債が増加したと考えられる企業では、負債の増加により事後的なイノベーション活動が阻害された可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
データ収集に関しては、企業財務データや特許データの収集は終了しており、M&Aデータに関しては今後の分析に合わせ収集を行う。分析に関しては、上場企業の合併のケースに焦点を絞った、初歩的な分析を行ったが、特許データに対して修正を行う必要性が生じている。その他、非公開化型マネジメント・バイアウト案件を対象に、株式市場からの退出が企業のイノベーション活動に与える影響の分析を行っている。
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Strategy for Future Research Activity |
データに関しては、今後の分析に合わせ、M&A案件の収集を行い、データセットを拡張する。特許データについては、必要な修正を行う。分析に関しては、特許データの修正に合わせ、これまでの分析の修正を行い、新しく収集するM&Aデータを用い、分析の範囲を広げる。マネジメント・バイアウトのケースについては、得られている結果の頑健性の確認を行う。
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Causes of Carryover |
本年度は当初購入を予定していたM&Aデータは使用せず、他のデータを使用して分析を行った。次年度に当初予定していたM&Aデータの購入を行う予定である。
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Remarks |
Kawanishi, Takuya (2021) "Going Private Transactions and Firm Innovation: Evidence from Japanese Management Buy-outs," SSRN Working Paper (No. 3816462).
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