2021 Fiscal Year Research-status Report
The effect of common ownership on stock price efficiency and corporate governance
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19K01741
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Research Institution | Hosei University |
Principal Investigator |
高橋 秀朋 法政大学, 経済学部, 教授 (90583659)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 機関投資家 / ガバナンス / 価格効率性 |
Outline of Annual Research Achievements |
世界的な機関投資家による株式保有の増加に伴い、企業が同一の投資家を株主として持つ状況(コモンオーナーシップ)が増加している。コモンオーナーシップの増加は株式収益率の共変動増加に伴う流動性ショックの波及を引き起こすことが懸念され、欧米を中心に多くの学術的研究でコモンオーナーシップの影響に関する分析が始まっている。コモンオーナーシップはインデックス運用によるところが大きく、パッシブ運用目的のファンドによる保有が増える際の短期的なインパクト、彼らのプレゼンスが高いことによる流動性への影響が懸念されている。 2021年度は、コモンオーナーシップへの企業の対策として用いられる自己株式取得に注目し、その企業行動が株式市場における価格効率性や市場流動性にどのような影響を与えるのかという研究を2020年度より継続して行っていた。2020年度末に当該論文を国際ジャーナルに投稿したが不採択となったため、論文の方向性を含めその内容をどのように改善させていくかを共著者と協議し、2021年度末に論文の改訂版を完成させた。そこでは、経営者がコモンオーナーシップの影響を排除するために既存株主に対して高いプレミアムを支払い自己株式取得を行っているという先行研究では見られない新たな発見を示すことができた。論文の内容を精査し、2022年度の前半には国際ジャーナルに投稿する予定である。 また、2021年度は、経営者の特性が企業行動に与える影響の論文も完成させ、RIETIのDPとして発刊されている。こちらに関しては、当該研究課題と直接関係のあるような発見はできなかったが、企業のガバナンスという観点で何らかの知見を与えてくれる可能性もあるため、引き続き研究を継続していきたいと考えている。 その他、投資信託がCSR指標を通じて行うガバナンスがどのような経済的インパクトを及ぼすのかという研究も開始している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2021年度も引き続き、コロナウィルスの影響で共著者(在外研究中のアカデミックホスト)と連絡を密にとることが難しく、論文の改訂がなかなか進まなかった。ただ、このような状況下でも、不採択となった論文を大幅に改訂し、新しいバージョンを完成させたこと、さらに1本の論文をRIETIのDPとして発刊できたことから、研究の全体プロセスとしては順調に進んでいるといえる。また、新たに始める予定である投資信託がCSR指標を通じて行うガバナンスに関する論文の先行研究のレビュー、必要なデータベースの整理ができたという点に関しては計画当初の予定よりはやや進んだ状況と言える。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度は2021年度中に改訂、完成させた2論文を国際ジャーナルに投稿し、論文を査読者からの返信を受けて適時改訂していくとともに、コロナウィルスの影響で2021年度中にできなかった学会での研究成果報告を同時並行していく年とする予定である。また、現在進行中である、投資信託がCSR指標を通じて行うガバナンスに関する論文について、より精緻な分析を行っていき初稿を完成させることが本年度の目的となる。しかしながら、2021年度は最初のバージョンが不採択になるなどの経験もしているので、2021年度から準備を始めた新しい研究へ注力するなど適時柔軟な対応をしていくことを考えている。
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Causes of Carryover |
2021年度は論文を国際学会、海外のセミナーにおいて研究成果報告していく予定であった。しかしながら、前年度から引き続き、コロナウィルスの影響から、アカデミックホストや共著者との議論も進まず、多くの国際学会の開催がキャンセルされるという状況で、当初予定していた旅費の使用がなくなった。2021年度に使用できなかった旅費の使用は、2022年度(場合によっては期間延長後の期間)における対外発表で利用する予定である。また、月次の株価収益率、投資信託の日次の価格、収益率や設定条件のデータベース、その他CSR指標に関連するデータベースの購入が追加で必要な状況となっているため、これらに充当する予定である。
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Research Products
(1 results)