2019 Fiscal Year Research-status Report
Empirical Analyses on the Effects of Unconventional Monetary Policy Considering External Factors
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19K01747
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
青野 幸平 立命館大学, 経済学部, 准教授 (20513146)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 金融政策 / 石油価格 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は主に3つの研究を実施してきた。1つめは,非伝統的金融政策の手段の1つとして注目されている「日本銀行によるETF購入政策」が日本の株式市場に与える影響について分析を行った。その際に,原因と結果について識別する方法として「Synthetic Control Approach」と呼ばれる手法を用いた結果,一定の効果が認められた。この結果については,“Did the BOJ's Purchases of ETFs Affect the Stock Prices? A Synthetic Control Approach”(共著)としてまとめて2020年度以降に投稿を進めていく。この分析結果を基準に,石油価格や為替市場などの影響を考慮した分析が次の段階になる。ETF購入政策の株式市場への影響を考察することは,非伝統的金融政策の「出口」を考察する上でも意義のある研究である。 2つめは,石油関連企業の株価・船舶の輸送価格・為替レートなどの情報を用いて石油価格の変動要因を「需要要因」・「供給要因」・「為替要因」・「その他要因」に分解する研究を行ってきた。この研究の一部は,“Oil Shocks, Exchange Rate Shocks, and Japanese Stock Market” (共著)として2020年度に開催される学会において報告予定である。石油価格は株式市場に影響を与えると考えられる主要な外的要因である。その外的要因の変動要因を考察することで株式市場との関連を考察する際により明確な分析が可能になる点で重要である。 3つめは,外的要因として為替市場の制度が株式市場に与える影響を,為替市場の制度が何回か大きく変わった中国に着目して分析を行った。その結果,為替市場制度が株式市場に与える影響は一定程度観察されるものの,予想されるほど大きくはないことを確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究課題では,石油価格や為替市場,海外の経済状況のような「外的要因」を考慮した上で非伝統的金融政策(マイナス金利・リスク資産購入など)が日本の株式市場に与える影響について考察する課題である。そのために,石油価格の影響について各種要因に分割する研究,為替制度が株式市場に与える研究などを行ってきた。また,外的要因を考慮はしていないが,非伝統的金融政策の1つであるETF購入が与える影響についても考察してきた。その意味で,研究課題1年目の進捗状況としては悪いわけではない。 しかし,下記の2点について進捗状況についてマイナスの自己評価をする必要がある。1つめは,金融政策の動きを捉えるために活用予定の「コールレート翌々日もの(Tomorrow Next)」において価格がつかない(取引が成立しない)日が存在し始めており,その扱いをどのようにするのかについて考えていく必要がある。つまり,Tomorrow Nextの取引がないことが何らかの情報を持っているのであれば,その情報を考慮した上で分析をしなければバイアスのある分析を行ってしまう可能性がある。この点についてまだ解決策を見つけることが出来ていない点である。 2つめは,2020年1月30日におけるWHO事務局長の「パンデミック」発言以降のCOVID-19の影響である。ウイルスの影響は,株式市場にとって「外的要因」の1つであり,本研究課題においても早急に分析対象に含める必要がある。しかし,その影響があまりにも大きく,また広範囲に及ぶため,石油価格や為替市場以上に様々な要因が複雑に影響し合っており,本研究課題にどのように取り入れるべきかの判断が難しい。その上,COVID-19の影響で,2020年度に報告予定(採用済)の海外学会が延期されるなどの影響も出ている。それらの点を考慮して今回の評価にした。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題の今後の推進方策は下記の通りである。 現時点で分析が終わっている3つの研究については,投稿や学会発表などを通じて論文のブラッシュアップをはかっていく。また,Tomorrow Nextの取引がない日にどのような特徴があるのか,また特別な特徴がないのかを整理した上で,データ欠損の扱いを決めていく方針である。この際に,新聞記事や他の金融データを大量に入手する必要がある場合には,大学院生のTAを雇用するなどの対応をする予定である。 次に,COVID-19の影響をどのように考察・考慮していくかについては,現時点において収束が見えないので影響を把握することが難しい。しかし,外的要因が株式市場に与える影響を研究している本研究課題において無視することも出来ない。そこで,「Event Study」の手法を利用することで,COVID-19が株式市場に与えた影響について考察することからはじめ,どのような影響を与えているのか,その影響にはどのような特徴があるのかなどを分析することを出発点として,本研究課題に含めていく方向性を考慮していくことにする。
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Causes of Carryover |
データ分析において,「企業別」・「産業別」のデータを整理する前の段階の研究に予定よりも時間がかかっているため,企業データ・産業データなどの購入を,可能な限り直近までの分析をするために,2019年度は見送ったことで次年度使用額が生じた。 この金額については,上記のデータ購入,ならびに研究成果報告のための学会出席関連費用として使用する計画である。
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