2019 Fiscal Year Research-status Report
Theoretical and empirical study on optimal exit strategy from non-standard monetary easing by European Central Bank
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19K01748
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
高屋 定美 関西大学, 商学部, 教授 (60236362)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 非伝統的金融緩和 / VARモデル / マイナス金利政策 / 出口戦略 / TLTRO / 財政移転 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、欧州中央銀行(ECB)の非標準的金融政策の概要を整理している。すなわち、欧州債務危機の際に、ユーロ加盟国の国債購入を行い、またTLTROなどの従来にない、市中銀行への融資枠組みを設けてきた。また、2014年にはマイナス金利政策も日本銀行に先んじて導入し、一定の金融緩和効果があったものと考えられる。これらの効果についてはすでに公刊済みでもあるが、それらを整理し、必要に応じて最新のデータを用いて再検証している。それらはあらためて最新のデータを用いてVARモデルを用いた再推定であり、それらを用いて出口戦略が可能なのかどうか考察することができる。 さらに本年度はユーロ圏加盟国間の経済格差を前提とした上で、どのような経済ガバナンスがEUでは可能なのかどうかを考察した。これは日本EU学会での大会報告として発表している。経済格差の解消を労働移動で行うことの困難さを、ここで示唆したが、経済格差がECBの金融緩和によって強まったのか、それとも弱まっているのかも研究している。加盟国間の経済格差問題はECBの出口戦略を検討する上でも重要な課題といえる。本年度の研究では、経済格差の問題は、労働移動で解消することは難しく、そのため資本移動が重要な要素となることを示唆している。さらに、それも短期間で困難な場合には財政移転が必要であることを提言している。 したがって、ECBの金融緩和の出口を検討する際にEUの財政政策、特に財政移転の役割も重要であることを示唆している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は欧州中央銀行の金融緩和の概要を整理し、出口戦略を模索する条件のための文献整理を行うことができた。またすでに行った金融緩和効果の実証研究を、あらためて最新のデータを用いて再推定を行い始めており、それらを用いて出口戦略が可能なのかどうか考察することができる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究として、欧州中央銀行による非伝統的金融緩和政策の実体経済への効果を実証的に再検証する。また、ユーロ圏加盟国間の経済格差も視野に入れ、それらが収斂しようとしているのか、それとも拡大しようとしているのかをβconvergenceの概念を利用して、確認する。その上で、金融緩和が経済格差にどのような影響を与えたのかも考察する。 出口戦略を考察する研究では、ユーロ圏の実体経済の平均的な状況を想定して、それらが改善しているのかどうかを議論しているものの、ユーロ圏では加盟国間の格差が大きな構造的問題でもある。そのため、金融緩和と格差との関係をさらに検証し、出口戦略を進める上で、経済格差がどのように推移すると予想されるのかも考察する。
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Causes of Carryover |
本年度は、主に文献研究を行ったため、有償のデータベースの契約を行わなかった。そのため、次年度使用額が発生した。次年度では、Refinive社のDatastreamとの契約を行なう予定であるため、助成金を使用する予定である。また、今年度、ニュージーランドでの国際学会で発表する予定(採択済み)であるため、旅費が必要となる。
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