2020 Fiscal Year Research-status Report
大規模な金融危機に関する理論的および実証的研究と政策の解明
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19K01752
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
中田 豪 新潟大学, 人文社会科学系, 准教授 (70509439)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 預金取り付け / 規律付け |
Outline of Annual Research Achievements |
大規模な金融危機に見舞われた近年において、公的資金注入や国際間における金融支援の在り方、情報開示の是非、金融機関に対する規律付けなどに関して望ましい政策が切望されている。しかしながら、それらに関する研究蓄積は十分ではなく、既存の理論モデルの現実的整合性も不明な点が多々ある。本研究では、公的債務危機、預金取り付け、通貨危機といった金融危機がどのようにして発生し、さらに、それらの危機がいかに深刻化するかについて理論的および実証的に分析する。また、情報構造や規律、資金援助がそれらの金融危機において果たす役割を探り、政策含意を導出する。 今年度は前年度に続きそれらの課題のうち市場規律に着目し、短期負債が銀行の行動にどのような影響を及ぼすのかを分析した。先行研究では、短期負債が銀行を規律づけるということが定説である。銀行が要求払い預金あるいは短期負債といった形で借り入れを行うと、ひとたび銀行経営者が債権者の意に反する行動をとると銀行から預金が引き出される。これを危惧する銀行経営者は債権者の利益にかなった行動をとろうとする。先行研究では単一の銀行を扱っていたが、本研究ではそれらの分析を複数の主体を含んだものに拡張する。複数の銀行や銀行以外の金融市場が金融危機において相互に影響しあうため、短期負債が及ぼす影響も複雑になる。そこにおいては、必ずしも短期負債が規律付けを行うとは限らないことが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
一つ目の課題について、情報構造が及ぼす影響について再考する必要が生じたため、他の課題の着手が遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
一つ目の課題の分析を進めて、他の課題にも取り組む。
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Causes of Carryover |
コロナ禍で国際学会がオンラインでの開催となったことに伴い、旅費が不要となったため。
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