2019 Fiscal Year Research-status Report
Risk-taking of individual investors in FX margin trading
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19K01754
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
岩壷 健太郎 神戸大学, 経済学研究科, 教授 (90372466)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | FX証拠金取引 / 行動バイアス / 自信過剰 / 心の理論 / 時間割引 / 不確実性回避 / 投資戦略 |
Outline of Annual Research Achievements |
令和元年には、FX市場での個人投資家の投資パフォーマンスに最も影響を与える要因は何かをアンケートを用いて分析した。その結果、行動バイアスが投資家間のパフォーマンスの違いのほとんどを説明することが明らかになった。損失回避、曖昧さ回避、時間割引、心の理論(美人投票)だけでなく、特に自信過剰が重要な役割を果たしている。 レバレッジ、他の投資家の意見の参照、自分のルールに従うこと、コントラリアン投資など、投資戦略や取引行動のいくつかはパフォーマンスにも影響を与えるが、これらの要因によって説明される変動はかなり小さいことも判明した。 行動バイアスのほとんどは通常パフォーマンスに悪影響を与える方向で取引行動にも影響を与えるが、パフォーマンスへの影響は直接的なものが多い。 さらに、女性の優れたパフォーマンスを発見した。すべての社会・人口統計学的変数の中で、ジェンダーはパフォーマンスに最も強固な影響を与えている。女性は男性に比べて損失回避的、男性は女性に比べて自信過剰という性別の違いが顕著であり、これが女性の市場参入障壁を高くしている可能性を示唆している。その結果、自己選択効果により、より優れたスキルを持つ女性だけが市場に参加し、より優れたパフォーマンスを発揮することになる。 分析の結果が示す重要なメッセージは、自分自身の行動バイアスを認識し、修正することが、おそらく投資パフォーマンスを向上させるための最良の方法であるということである。この結論はFX市場という特殊なケースのみならず、他の市場でも通用する可能性がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和元年は、FX証拠金取引を行っている個人投資家を対象にアンケート調査を行い、そのデータをもとに分析を行った。また、FX証拠金取引の取引データをもとに、分析を行っている。これはまだ未完成であるが、令和2年度に論文にまとめるつもりである。以上により、総じて研究計画通りに順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
令和2年には、気質効果とハウスマネー効果というリスクテイクに対して対照的な2つの 心理バイアスを分析する。気質効果は含み益を抱えると利益を確定するが、含み損を抱える と損切りを先延ばす投資家心理を表しており、一方、ハウスマネー効果とは利益を得た後に リスクをとろうとする傾向を指す。損切りの先延ばしはプロスペクト理論に従うとリスク選 好の高まりと解釈できるので、両者はリスクテイクの動機が対照的である。この2つの心理 バイアスが日本のFX取引市場で見られるのか、同じ投資家でも見られるのか、両効果が収 益を悪化させるのか、FX取引データを用いて検証する。
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Causes of Carryover |
予定していたアンケートの実施を令和2年に延期したため、次年度使用額が生じた。
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