2021 Fiscal Year Research-status Report
Understanding the Gains from Wage Rigidity in a Currency Union with Default Risk: Focusing on the Relationship between Terms of Trade and Fiscal Balance
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19K01755
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Research Institution | Nagoya City University |
Principal Investigator |
岡野 衛士 名古屋市立大学, 大学院経済学研究科, 教授 (20406713)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | Wage Rigidity / Default Risk |
Outline of Annual Research Achievements |
2021年度は危険資産利回りの安全資産利子率からの乖離が生じるメカニズムをアドホックな設定ではなく可能な限り先行研究に則り最適化問題を解いた結果としてこの乖離が生じるというメカニズムとしてモデルに組み込むことに腐心しモデルを設定し直した。たしかにOkano and Inagaki (2017)では国債のクーポンレートは実質財政黒字の減少関数であることが実証的に示されている一方、この設定はアドホックであり議論を呼ぶところでもある。 そこで、交易条件の変化は国債のクーポンレートに影響を及ぼしオイラー方程式を通じて消費、ひいては雇用ギャップおよびデフォルトリスクを変化させることに着目し、Benigno (2009)にあるように対外純資産の変化が国際金融市場へのアクセスに何らかの費用を発生させ、危険資産利回りの安全資産利子率からの乖離が生じるという設定に変更した上でモデルに組み込んだ。モデルは予想通りに作動し、名目賃金の硬直性が低ければ実質財政収支は安定的になり、デフォルトリスクを悪化させないため共通通貨圏での経済厚生損失は変動相場制でのそれを下回るという結果が得られた。したがってGM (2016)と異なりデフォルトリスクを伴う共通通貨圏では低い名目賃金の硬直性は経済厚生損失の削減に貢献するという政策的含意が得られた。なお、我々が得た結果は共通通貨圏では固有の金融政策が存在しない分、交易条件の変化は小さく、名目賃金の硬直性が低ければ実質財政収支は安定的になり、デフォルトリスクを悪化させないため共通通貨圏での経済厚生損失は変動相場制でのそれを下回るという所期の推論と整合的である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
理論分析は概ね完成をみたものの新型コロナウィルス感染症の感染拡大抑制の見地から海外渡航が制限されており、海外での有力会議や学会での報告はままならず、本研究への海外の研究者の意見やコメントを十分言えるに至っていない (会議や学会へのオンライン参加は必一方的な報告にとどまることが多い)。したがってこれまでの研究成果を一にまとめて国際雑誌に投稿するに至っていない。国際雑誌に投稿するためにはレフェリーたり得る海外の研究者達と十分な議論を重ね、モデルの瑕疵を排除し読者の関心を引くように論理を展開していく論文執筆が必要不可欠である。加えて海外の研究者と良好な人間関係を構築することも今後の研究情勢の情報収集や分析に必要不可欠であるが、何分海外での会議や学会への参加が大きく制限されているためそれもままならず、論文を投稿する雑誌の選定も終わっていない。 理論分析のみならず実証分析にも着手しており、データを収集しモデルのベイズ推定が可能であることは既に判明している。ただし、我々の理論分析が導く政策的含意への海外の研究者の評価が定まっていないため、実証分析の結果に基づく論文のシナリオを思い描くまでには至っていない。このため本格的に実証分析に着手出来ていない。つまり、単純にモデルをベイズ推定し、シミュレーションに必要なパラメータを得ることに既に成功している一方、論文の執筆にまでは至っていない。 以上のことから残念ながら進捗状況は芳しくなく、遅れているといわざるを得ない。
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Strategy for Future Research Activity |
海外への渡航制限が緩和されることを見越して既に積極的に海外での有力会議や学会への報告申し込みを積極的に行っている。また、オンラインでの会議や学界参加に於いても可能な限り海外の研究者と交流し、有益なコメントを得てかつ良好な人間関係を構築することに努めていきたい。その上で、現在までの進捗状況に鑑みて以下の事柄を推進していく。 その第1は理論分析の論文のファイナライズと投稿すべき雑誌の選定と投稿である。先にも述べたように理論分析は既に終えており論文も概ね完成を見ている。ただし、海外の研究者から有益なコメントを得るにまでは至っておらず、論文の論調、問題意識の設定や論理の展開についてまだまだ我々の間で議論の余地がある。今年度はまず海外の研究者との議論を通じてこの問題を解決し論文をファインライズさせる。次いで、研究者との交流を通じて研究情勢を把握、分析し、投稿先として最適な雑誌を見いだし、投稿する。 実証分析の結果を一にして論文として執筆し最終的に雑誌に投稿することも残された課題である。理論分析の論文同様、やはり海外の研究者と議論を重ねて読者の関心に沿うような論理の展開を見いだすことに腐心し、実証分析の論文の本格的な執筆に着手する。 いずれにせよ、海外の研究者との交流が必要不可欠であり、依然として渡航は制限されているものの今後の制限緩和を見越して積極的に会議や学会に応募し、研究者と交流し、また、オンラインであってもそのことにとらわれず積極的に研究者と交流していく。
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Causes of Carryover |
新型コロナウィルス感染症感染拡大抑制の見地から海外渡航は著しく制限されており、このため旅費を中心として研究経費を使用する機会を喪失した。このため次年度使用額が発生した。本年度は積極的に海外での会議や学会へ出席し、次年度使用額の多くを旅費に先、所期の予定通り海外の研究者との意見交換に与するよう研究経費の使用に努めたい。
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Research Products
(3 results)