2021 Fiscal Year Research-status Report
Equity and Debt Finance of the Japanese REITs
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19K01760
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Research Institution | Hosei University |
Principal Investigator |
金 よん晋 法政大学, 経営学部, 教授 (80326008)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 不動産投資信託 / エクイティ・ファイナンス / スポンサー企業 / 新規投資口公開 / 公募投資口発行 |
Outline of Annual Research Achievements |
日本版不動産投資信託(J-REIT)市場において不動産投資法人(以下、投資法人)のスポンサーが投資法人の財務行動に及ぼす影響は重大である。その中で本研究は投資法人の新規投資口公開(IPO)におけるスポンサーの役割に照準を合わせて分析を行った。まず、J-REITにおけるスポンサーの定義を確立し、メインスポンサーとサブスポンサーの特定を行った。2001年から2019年の間にIPOを行った79社の投資法人に対するIPO時点のスポンサーの追加出資(IPO時の親引け)に注目し、当該スポンサーがIPO時の過小値付けとIPO 後の企業価値にどのような役割を果たすかについて分析を行った。過小値付けに関しては、IPO時のスポンサーの追加出資と過小値付けに正の関係があること、過小値付けがIPO後の公募増資を早めることがわかり、概ねシグナリング仮説を支持する結果が得られた。この結果は、過小値付けの程度が大きい一般事業会社のIPOとは異なるものである。投資法人と投資家との間の情報の非対称性が限定的になるIPO後の企業価値に関しては、IPO時のスポンサーの追加出資はIPO直後3年間の企業価値と正の関係があり、スポンサーと投資家間の利益相反問題を軽減する役割を果たしていることが確認された。 以上より、J-REITのIPO時におけるスポンサーの追加出資は、IPO時には投資法人の質の差別化を図るシグナリング手段としての役割、IPO後には、オーナー経営者であるスポンサーと投資家との利害を一致させるコミットメントとしての役割を担うという、二重の役割を果たしていることが示唆される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上記の研究実績に関連し、2021年6月に開催された日本ファイナンス学会第29回大会にて「J-REITのIPOにおけるスポンサーの役割」というタイトルで報告を行った。その後同学会の学会誌に投稿を行い、改訂プロセスを経て受理された論文がオンラインにて早期公開された。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度までに、J-REITのエクイティ・ファイナンスに関連し、不動産投資法人のIPOにおけるスポンサーの役割について一定の研究成果が得られた。次年度は、エクイティ・ファイナンスに関する追加的研究として、不動産投資法人の公募投資口発行(SEO;Seasoned Equity Offering)のタイミングや市場評価と、その決定要因の分析に取り組む。分析の際には、不動産投資法人特有の変数のみならず、J-REIT市場や不動産市場関連の変数を取り入れることによって、J-REIT市場における不動産投資法人の資金調達行動について新たな知見を見出すことを試みる。この研究成果について今年度に日本ファイナンス学会等で報告を行う計画である。
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Causes of Carryover |
補助事業の目的をより精緻に達成するための研究を実施(学会参加、論文投稿など)するために、次年度使用額が生じた。現在取り掛かっている研究を完成するために追加検証を実施するとともに学会参加・論文投稿を行うために助成金を使用する計画である。
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Research Products
(2 results)