2021 Fiscal Year Research-status Report
Interaction between CSR activities and R&D Investment from a Corporate Sustainability Perspective
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19K01761
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
首藤 惠 早稲田大学, 商学学術院(経営管理研究科), 名誉教授 (10206568)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
竹原 均 早稲田大学, 商学学術院(経営管理研究科), 教授 (70261782)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | CSR / Innovation / diversity / work-life balance / corporate sustainability / intangible assets / employees / stakeholder management |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、コーポレート・サスティナビリティの観点から、CSR活動と研究開発活動の相互関連について、金融市場の評価の枠組みを用いて実証分析し、研究開発とCSRへの戦略的取り組みが持続的経営に結び付く経路とメカニズムを解明して、戦略的CSR研究の新たな視点を切り開くことである。2021年度は、対従業員CSRと組織の革新力の関係に分析を進め、学会報告(1)(2)と学術誌採択(3)の実績を残すことができた。 (1) Employee-Oriented CSR, Innovation, and Firm Value(日本ファイナンス学会第29回 大会報告、6月6日),(2)同GCCI 2021報告 (Corporate Social Responsibility, Sustainability, Ethics and Governance Lisbon, Portugal, 25 June。 (3) Suto,M.& Takehara,H.(2022) Employee-oriented corporate social responsibility, innovation,and firm value. Corporate Social Responsibility and Environmental Management,1;14;https://doi.org/10.1002/csr.2232。 (1)(2)は、対従業員CSRが企業の技術革新力と企業価値評価とどのような関係をもつか、2006-2016年の日本の製造業を対象に、職場の機会均等とワークライフバランスを非金銭的報酬とみなし、金銭的報酬との関連を含めた責任ある人的資源管理を通じて組織のイノベーション能力と企業価値に与える効果を検証した。(3) は、(1)(2)の学会における討論者・参加者及び学術誌審査員のコメントを受けて加筆修正し、2021年9月に投稿、修正を経て同12月に採択され、2022年1月Early viewが掲載。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は、企業の長期持続的成長の視点から、CSR活動と研究開発の相互関連について、次の5つの実証的研究課題に応えることである。①技術競争力が高い企業におけるCSRと研究開発投資との関連、②CSRが企業固有リスクを軽減し研究開発を支える機能、③CSRと技術開発をつなぐがチャネルあるいはメカニズム、④CSRの機能に企業特性・産業特性・ガバナンス構造が与える影響、および、⑤市場環境変化や制度的変化がCSRと技術開発の関連に与える影響。これらの課題に照らして、2021年度の進捗状況は以下の通りである。 研究実績(1) (2)(3)は、①③④⑤研究課題に応える分析である。とくに③に関して、対従業員CSR(職場の機会均等やワークライフバランス)が従業員のモチベーションを通じて技術革新力に与える効果に注目し、新しい分析視点を提供している。その際、日本製造業を取り巻く制度特性と市場環境およびその変化との関連に配慮して分析を進めており、④⑤の課題に応えている。 これらの研究と並行して、対従業員CSRが組織の経済的パフォーマンスに及ぼす影響について、全要素生産性を用いた分析を進めている。組織内部における機会均等と労働環境が労働意欲の向上を通じて直接的に生産性の向上に結び付くだけでなく、組織のイノベーション能力の改善を通じて間接的に生産性を高めることを検出。この研究は、組織効率という新たな視点から、これまでの研究を補強する。同研究は、学会報告論文(Diversity in the Workplace, Work-life Balance, and Organizational Productivity: Role of Innovation Capability)としてまとめ、2022年日本ファイナンス学会第30回記念大会(6月4日)で報告予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度は、企業の持続的成長のためのステークホルダー・マネジメントの観点から、内部ステークホルダー(employees)と外部ステークホルダー (investors)との関係構築が、技術革新と企業価値に与える影響に焦点を当てた分析を進める。企業の技術革新能力は長期競争力の基盤であり、その中核は内部ステークホルダーである従業員の能力と意欲である。他方で、外部ステークホルダーである投資家へのESG engagementが市場でどのようなシグナルとしてとらえられているかが、対従業員CSRと責任ある人的資源管理に大きな影響を与える。現在、日本企業は、従業員の機会均等や労働条件改善への内外の要求の高まりとグローバル技術開発競争の激化もとで競争力の向上を図らなくてはならない状況にある。投資家のESG 評価が対従業員CSRと組織の技術革新力に与える影響を分析することは、日本企業が直面する重要な経営課題を明らかにする。 具体的には、次の2つの新たな分析視点を加える。 (1) 対投資家CSR と対従業員CSRの相互関連が組織のイノベーション能力に与える効果に注目し、統合的なステークホルダーマネジメントの在り方を探る。 (2)対投資家CSR(ESG engagement)の代理変数として独立機関によるESG格付け情報を用いて、それが対従業員CSRと組織のイノベーション能力の関係に与える効果(moderator effect)を検出する。この分析は、CSRと技術開発をつなぐメカニズムとしての投資家情報発信(研究課題③)、CSRの機能にガバナンス構造が与える影響(研究課題④)に対応する。 現在、理論的枠組みの構築に取り組み、ESG 格付けデータの検討および検証モデルの構築について予備的作業を進めている。
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Causes of Carryover |
社会状況のもとですべての学会がオンラインとなり、旅費交通費の使用ができなかった。他方で、当該研究に関して、新たな分析課題を見出すことができ、次年度に研究の発展が見込まれる。次年度使用額550,650円は、必要な追加データ購入費、物品費、旅費にあてる予定である。
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Research Products
(3 results)