2022 Fiscal Year Research-status Report
Interaction between CSR activities and R&D Investment from a Corporate Sustainability Perspective
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19K01761
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
首藤 惠 早稲田大学, 商学学術院(経営管理研究科), 名誉教授 (10206568)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
竹原 均 早稲田大学, 商学学術院(経営管理研究科), 教授 (70261782)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | CSR / innovation / diversity / work Life balance / ESG ratings / engagement |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、コーポレート・サスティナビリティの観点から 研究開発とCSRへの戦略的取り組みが持続的経営に結び付く経路とメカニズムを明らかすることであり、2022年度の研究実績は、(1) Diversity in the Workplace, Work-life Balance, and Organizational Productivity: Role of Innovation Capability; (2) Stakeholder Perceptions of CSR and Organizational Innovation Capability: Role of ESG Rating Agencies as Information Intermediaries、の2点である。 (1)は、CSRと人的資源管理の関係性に注目し、対従業員CSRのコアとして職場の機会均等(EO)と従業員のワークライフバランス(WLB)が従業員のモチベーション(労働効率、革新力)を通じて、WLBは全要素生産性(TFP)の向上につながるかを検証し、日本ファイナンス学会(青山学院大学、2022年6月4日)において報告を行い、同学会における討論者・参加者のコメントを受けて、実証分析の枠組、方法および変数を再検討して、学術誌に投稿中である。 (2)は、情報仲介機関としてのESG格付機関の機能に注目し、企業のステークホルダー・エンゲージメントと組織の技術革新力の関連に及ぼす影響に分析を進め、従業員と投資家の行動を通じて組織の技術革新力に及ぼす統合的効果と、ESG格付情報がその関係に及ぼす効果を検出している。EESG ratings は、投資家エンゲージメントを強化するだけでなく、企業の社会的評価を通じて従業員の組織コミットメントを強化し、組織の技術革新力に正の効果を与えるという結果がえられた。この研究は、CSR, Sustainability, Ethics and Governance 9th International Conference 2023 (14th-16th, June, Santander, Spain (organized by Santander Financial Institute of UCEIF Foundation in collaboration with the Global Corporate Governance Institute)での報告が決定している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は、CSR活動と研究開発の相互関連について、次の5つの実証的研究課題に応えることである。①技術競争力 が高い企業におけるCSRと研究開発投資との関連、②CSRが企業固有リスクを軽減し研究開発を支える機能、③CSRと技術開発をつなぐがチャネルあるいはメカニ ズム、④CSRの機能に企業特性・産業特性・ガバナンス構造が与える影響、および、⑤市場環境変化や制度的変化がCSRと技術開発の関連に与える影響。 これらの 課題に照らして、2022年度の進捗状況は以下の通りである。 研究実績(1)は、①③⑤研究課題に応える分析を集大成し、データの精緻化、分析視点と分析方法の再検討を進めてきた。研究実績(2)はとくにステークホルダー・エンゲージメントとESG格付け情報との関連が従業員と投資家のperceptionsと行動に与える影響に光を当て、③のCSRと技術開発をつなぐチャネルとメカニズムの分析を深化させている。ステークホルダー理論、resource-based management理論、social identity 理論 をベースに組織内部における対従業員CSRが労働意欲の向上を通じて直接的に生産性の向上に結び付くだけでなく、外部の社会的評価を通じて従業員の組織へのコミットメント意欲に結び付くという検証仮説を導いている。④⑤の課題に応えている。
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度は、企業のステークホルダー・エンゲージメントが企業の技術革新力と企業価値に与える影響に注目し、外部非財務情報プロバイダーとしてESG格付けの効果を検証する。企業の技術革新能力は長期競争力の基盤であり、その中核は内部ステークホルダーである従業員の能力と意欲である。ESG格付情報は、外部ステークホルダーである投資家の評価や社会的評判を通じて、対従業員CSRと人的資源管理に大きな影響を与える。組織の革新力を基盤とする企業の持続的成長に、企業・ステークホルダー・非財務情報プロバイダーの三者の関係が与える効果について、統合的に分析を進める。 現在、日本企業は、従業員の機会均等や労働条件改善への内外の要求の高まりと グローバル技術開発競争の激化もとで競争力の向上を図らなくてはならない状況にある。外部ステークホルダーのESG評価が従業員の行動と組織の技術革新力に与える影響を分析することは、日本企業が直面する重要な経営課題をCSRの視点から明らかにすると同時に、わが国資本市場におけるESG格付け機関の機能を検証する上できわめて重要である。 5つの実証的研究課題のうち、③CSRと技術開発をつなぐがチャネルあるいはメカニ ズム、④CSRの機能に企業特性・産業特性・ガバナンス構造が与える影響、および、⑤市場環境変化や制度的変化がCSRと技術開発の関連に与える影響について、さらに分析を深化させる。研究開発とCSRへの戦略的取り組みが持続的経営に結び付く経路とメカニズムを解明して、戦略的CSR研究の新たな視点を切り開くという当初の研究目的に沿って集大成し、学術書にまとめる準備を行う。
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Causes of Carryover |
コロナ禍のため、予定していた海外出張が不可能となったため。次年度の海外出張のための旅費の一部および発表論文の英文校正費等に使用する予定である。
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Research Products
(2 results)