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2020 Fiscal Year Research-status Report

自己株式の取得に関する総合的研究

Research Project

Project/Area Number 19K01768
Research InstitutionKansai University

Principal Investigator

太田 浩司  関西大学, 商学部, 教授 (70366839)

Project Period (FY) 2019-04-01 – 2022-03-31
KeywordsToSTNeT買付 / 相対取引 / 取引の公平性
Outline of Annual Research Achievements

本年度の申請研究の研究実績としては,わが国独自の自己株式取得方法であるToSTNeT買付の取引実態について調査を行った論文がある。ToSTNeT買付による自己株式取得の最大の特徴はその迅速性であり,取得公表から買付までの時間が16時間程しかない。従って,ToSTNeT買付は,特定の大株主からの売却が予定されている場合に用いられる取得方法であり,事前に具体的な買付内容をTDnetで公表することによって,取引の公正性を確保するとともに,売却予定の特定大株主が有する自己株式取得情報に関するインサイダー取引規制の問題を回避している。また,ToSTNeT買付では,売付申込数量が買付数量を超えた場合には按分方式により取引を成立させるので,売却予定の特定株主以外の他の株主の売却機会も確保されている。
このように,ToSTNeT買付による自己株式取得は,制度上は取引の公正性や透明性が担保されているが,実質的にはその迅速性が原因となって他の株主の売却機会を損なっている側面があると思われる。そこで,本年度の申請研究では,ToSTNeT買付の取引実態について,2008~2012年の間に実施された898個のToSTNeT買付をサンプルとして調査を行っている。調査の結果,一般報告による変更報告書が利用可能な112個のToSTNeT買付の内,その4分の3に当たる85個のToSTNeT買付について,株式売却が単独の株主によって行われていることが明らかになった。また,自己株式取得企業と売却株主との間には,売却株主の7割が取得企業の筆頭あるいは次席株主である,売却株主が個人である場合には自身が取得企業の代表取締役を務めている等の密接な関係が存在するということがわかった。これらの結果は,企業のToSTNeT買付による自己株式取得が,実質的に企業内部者との間の相対取引となっていることを示唆するものといえる。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

本年度はコロナ禍の影響で当初はその対応に時間が割かれてしまい十分な研究時間の確保が困難となったが,その後は新しい研究環境に適応し,集中して研究を実施することが出来た。従って,年間を通してみれば,研究進捗に際して特に大きな問題は生じず,そのため予定していた「ToSTNeT買付による自社株買いの実態」に関する論文を出版することができた。よって,本研究課題の現在までの進捗状況はおおむね順調であるといえる。

Strategy for Future Research Activity

本年度も昨年からの引き続きで,自社株買いの公表がBad Newsの影響を緩和する役割を果たしているかというSignal Strength Adjustment行動についての研究を実施する予定である。本研究は,自社株買いのアナウンスが日米ともに決算発表等と同時に行われることが非常に多いという現象に着目している。そして,自社株買いと同時に公表される情報の内容を精査し,自社株買いがBad Newsと同時に公表される傾向があるのかについて調査する。もし経営者が,単に減益等のBad Newsの影響を緩和するためだけに,自社株買いを同時にアナウンスしているのであれば,経営者には予定買付数量を全て取得する動機が乏しく,結果として達成率(実際買付数量/予定買付数量)は低くなることが予想される。そこで,Bad Newsと同時に公表される自社株買いと,Good Newsと同時に公表される自社株買いの達成率を比較することによって,経営者が自社株買いを実施する動機について解明したい。
それ以外にも,Bad Newsの程度と自社株買いの取得枠の大きさとの関係を調査し,果たして経営者は同時公表されるBad Newsの程度が大きいときにより大規模の自社株買いをアナウンスするのかについて調査する予定である。

Causes of Carryover

(理由)
購入予定のデータの販売が遅れたため。
(使用計画)
前年からの持越し分も含めて,本年度は,Nikkei Media Marketing社が販売する「役員,監査法人・監査意見データ」を購入する予定である。また,企業の情報環境に関する影響をコントロールするために,IFIS社の販売する「IFISコンセンサスデータ」も,全ての期間は買えないので,昨年度同様に予算の許す範囲内で購入する予定である。

  • Research Products

    (1 results)

All 2020

All Journal Article (1 results)

  • [Journal Article] ToSTNeT買付による自社株買いの実態2020

    • Author(s)
      太田浩司
    • Journal Title

      関西大学商学論集

      Volume: 65(3) Pages: 43~67

URL: 

Published: 2021-12-27  

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