2019 Fiscal Year Research-status Report
Aircraft Development and the Dawn of the World Air Traffic-Focusing on the Junkers under the Versailles-
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19K01782
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Research Institution | Yokohama City University |
Principal Investigator |
永岑 三千輝 横浜市立大学, 都市社会文化研究科, 客員教授 (70062867)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | フーゴー・ユンカース / F 13 / 航空熱 / 大西洋横断飛行 / ヴェルサイユ条約 / ユンカース航空 / 世界航空交通構想 / 国際主義 |
Outline of Annual Research Achievements |
初年度は、ドイツにおいて、ヴェルサイユ体制の制限のなかで、民間航空機の開発と民間航空網建設がいかに行われたかを、ドイツ博物館のアルヒーフの企業文書(ユンカースを主として)調査した。 第一次大戦の前から、また戦時中にいても、フーゴー・ユンカースは新しい世紀の交通革命を成し遂げるものとして航空機開発を志していた。そして、終戦と同時に、軍需が途絶した経営・生産の苦境において、果敢に民間機(旅客貨物輸送機)の開発に乗り出した。その成果が、1919年夏には開発に成功した世界初の全金属製航空機F13であった。 このF13は世界を驚嘆させ、世界中から視察・購入希望が押し寄せた。国内でも航業が群生したが、そ戸で使用された航空機の筆頭機種がF13であった。ユンカースも、航空業部門を立ち上げた。しかし、ヴェルサイユ条約の空軍禁止規定の影響で民間機の製造禁止の羽目にあい、その後の普及にも種々の制約が課された。一時は、素材のジュラルミンを使った日用品類に急場をしのいだ。 しかし、その中でも大型化(輸送力の増大)のための開発を続け、国際的緊張が緩和する中で、国際的に市場を拡大した。航空機による国際交通の革命が民主主義的国際主義者フーゴーの理念であった。その方向性の一大成果が、大西洋横断飛行へのチャレンジであった。1919年にこの企画を立ち上げたが、ヴェルサイユ条約発効で頓挫した。それを復活させたのが1927‐28年であった。 このプロセスを「航空機開発と大西洋横断飛行――ユンカースの挑戦と航空熱――」高田編著『航空の20世紀――航空熱・世界大戦・冷戦――』(日本経済評論社、2020年2月刊)にまとめた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度の文書館調査を踏まえて、2本の論文をまとめ、公刊することができた。 ひとつは、研究実績の概要で挙げた拙稿「航空機開発と大西洋横断飛行――ユンカースの挑戦と航空熱――」高田編著『航空の20世紀――航空熱・世界大戦・冷戦――』(日本経済評論社、2020年2月刊、第4章)をまとめることができた。 もう一つは、これと並行して史料を集め、解読・分析を進めた拙稿「航空機開発と国際主義――ユンカースとデートマンの闘い――」『横浜市立大学論叢』社会科学系列、第71巻第1号を書き上げ、刊行できた。二つの拙稿は、それぞれに密接に関連し、フーゴー・ユンカースのヴェルサイユ体制のもとでの平和的国際主義とそれを担う航空機開発戦略を解明したものであり、開拓的な仕事と言えよう。 なお、この戦後初期から25年ー26年のユンカース社の問題としては、ソ連・モスクワ近郊フィリ進出工場の経営危機・撤退問題が、ヴェルサイユ体制問題と絡んで、重要となるが、これに関してはアルヒーフ文書を集め、ある程度の解析が進んだところである。この間の史料発掘の成果としては、「史料紹介:ユンカース社のソ連工場進出の投資額・負担額」を『横浜市立大学論叢』社会科学系列、第71巻第3号に投稿できた。ワイマール期・ヴェルサイユ体制下のドイツ航空機産業の調査を始めたとき、最初にフライブルクのドイツ連邦文書館(軍事文書館)で発見したのは、ユンカース社と陸軍兵器局のこの工場進出に係る負担問題であり、膨大な文書であった。だが、具体的に当初どのような資金需要があり、どのような負担があったのかわからなかった。それを明らかにするのが、史料紹介した重要文書であり、これを軸に、ソ連進出挫折の実態を多面的に解明していく途中である。
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Strategy for Future Research Activity |
ユンカース社のソ連進出とその挫折過程は、ドイツ航空産業史の黎明期とその抱えた難題とを解明する重要テーマであり、この間にアルヒーフ調査で集めた史料の解析を通じて、まとめていきたい。 その際、補充調査をドイツ博物館のアルヒーフ所蔵企業文書について行うと同時に、ユンカースの本社があったデッサウにあるザクセン・アンハルトの文書館にあるユンカース文書をまだ見ていないので、この調査を行いたい。このザクセン・アンハルトの文書館にある文書群は、まさに、ユンカースのソ連進出に直接関係し、ナチス政権誕生でフーゴーと若手重役デートマンが会社経営から放逐される根拠とされた「国家反逆罪」に係る文書群だから、この調査は書くことができない。 ただ、現在の新コロナウィルス禍の世界的状況・航空交通の途絶状態から、今年度、この調査を行えるかは、不確実である。その場合は、すでに集めた(文書館で撮影でいた)文書群を解読する仕事に集中せざるを得ないかもしれない。そして、ザクセン・アンハルト文書館調査は来年度に回さざるを得ないかもしれないと危惧している。
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Causes of Carryover |
年度末の冬季航空運賃最安値の時期にドイツ博物館調査を予定していたが、その金額には予算額が不十分であった。他方、明治大学大型研究の国際武器移転史研究所の予算から、2月史料調査出張費がでることになった。 そこで、余った予算額は、次年度に回すこととした。次年度の党書交付予定額が初年度より少ないためでもあった。 次年度は、これにより、ドイツへの史料調査が余裕をもって可能になる。 ただし、新コロナウィルス禍による国際交通途絶状態では、場合によっては、最終年度にある程度回さざるを得ないかもしれないと危惧している。
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Research Products
(7 results)