2019 Fiscal Year Research-status Report
戦間期日本の小麦輸入と世界市場―1920年代~30年代における国際商品の受容
Project/Area Number |
19K01788
|
Research Institution | Toyo University |
Principal Investigator |
大豆生田 稔 東洋大学, 文学部, 教授 (20175251)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | 小麦 / 食糧問題 / 貿易 / 商社 / 戦間期 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、1920年代-30年代に拡大する日本の小麦輸入が、当時既に、量的には国内生産量に匹敵する規模に達していた事実を踏まえ、東アジア諸地域の動向にも留意しながら、小麦輸入を可能にした条件、及び北米小麦の流入に端を発する東アジアの小麦流通の変容を解明することを目的とする。本年度の研究実績は次の通り。 1.基礎データの整備:農林省、食糧管理局など、戦前期の官公庁が発行した統計資料、報告書等の基礎資料を収集し、データの整理作業を進めた。 2.北米に展開した日系商社の小麦・小麦粉取引関係一次資料の調査・収集:三井物産の北米小麦・小麦粉取引関係資料の所在確認を行った。米国国立公文書館所蔵、Record Group 133のEntry92(Mitsui & Company LTD (Seattle) {WWII Seized Records}; Correspondence Regarding Import & Export Of Sundry Commodities, 1936-41)に、同社の小麦取引関係書類の所在を確認した。同Entryの中に、「Wheat and Flour」のラベルが貼付された11箱(Box55-65)を発見し、関係資料を摘出して写真撮影し、滞在期間に撮影不能の部分に付いては業者に撮影依頼した。この11箱は1936-41年の書類であるが、1935年以前のBoxは今回は確認できなかった。既に調査・収集済みの、三菱商事による小麦・小麦粉取引資料との比較検討が可能になるなど、日系商社の小麦・小麦粉取引の全貌・特質を実証的に解明する貴重な資料である。 3.研究成果の公表:三井物産と共に1920年代に、北米小麦・小麦粉の対日輸出を活発化させた三菱商事在米支店の「国際小麦取引」に付いて、一次資料によりその第三国取引(対欧輸出)を分析し、それが挫折する過程を論文にまとめた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究の申請後に、任期2年の文学部長に選出された。申請時には予期していなかったことであり、辞退したが容れられず、2019年4月1日に就任した。 就任後、日常的な業務に加えて、認証評価にそなえた学部自己点検・評価活動、学修成果測定指標の策定、カリキュラムの改訂、学部中期計画の策定・更新、また年度末には新型コロナウイルス感染拡大の防止対策等、学部内外にわたる業務がきわめて多大となった。このため、本研究課題に取り組む時間(エフォート)が大幅に低下することになった。特に、研究の基礎となる資料調査・収集が大幅に制約された。 夏休み期間に、関係資料の調査・収集のため、米国ワシントンDCの米国国立公文書館へ出張することができ、また、研究課題に関する論文1点の執筆を果たしたが、新たな収集資料を、整理し分析する作業が不十分であった。また、英国国立公文書館、大英図書館等の海外資料、国内の大学・研究機関・図書館等に所蔵されている諸資料の調査・収集も果たせなかった。
|
Strategy for Future Research Activity |
本研究の進捗に大きな影響を及ぼしている学部長職の任期はもう1年度残されており、研究2年度目となる2020年度も、なお任期中である。本実施状況報告書作成の時点で、なお新型コロナウイルス問題は予断を許さない状況にある。学部長職の遂行に、なお大幅な時間が割かれ、本研究の進捗を制約することが予想される。 しかし、2021年度には職が解かれる予定であり、同年度に本研究の遅れを取り戻すことは十分可能である。従って2020年度においては、東京、および周辺の大学・研究機関が所蔵する関係資料の調査・収集に作業を絞り、限定的に研究を推進することとする。 また、本研究の研究期間は2019~2021年度の3年間であるが、学部長職が解かれた2021年度(最終年度)内に、研究計画通りの研究の進捗が困難な場合は、研究期間について、2021年度に再検討を行い、研究期間の延長も含めて研究計画を立て直し、研究を完了させる予定である。
|
Causes of Carryover |
本研究の申請後に、任期2年の文学部長に選出された。申請時には予期していなかったことであり、辞退したが容れられず、本年度、2019年4月1日に就任した。 ①学部内外の業務が多大であったため、資料調査・収集などを目的とする海外・国内の出張を実施できなかった。また収集資料を整理し、データ入力などの基礎作業をアルバイトにより実施することも困難であった。②一方、米国国立公文書館所蔵資料の調査・収集においては、重要な資料の所在を確認したが、滞在期間が短かく必要部分を全て撮影できなかったため、同館に常駐する業者に撮影を依頼して調査を終えた。このため「その他」が予定以上に多額となった。 ①・②を差し引きした結果、次年度使用額を生じることになった。本年度実施できなかった資料調査・収集が可能になれば、そのための旅費、及び収集資料の整理のためのアルバイト謝金等に使用する計画である。
|