2021 Fiscal Year Research-status Report
戦間期日本の小麦輸入と世界市場―1920年代~30年代における国際商品の受容
Project/Area Number |
19K01788
|
Research Institution | Toyo University |
Principal Investigator |
大豆生田 稔 東洋大学, 文学部, 教授 (20175251)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | 小麦 / 食糧問題 / 貿易 / 商社 / 戦間期 / 戦時期 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、1920年代~1930年代に日本の北米・豪州小麦輸入が増加し、量的には国内生産量に匹敵する規模であったことを踏まえ、中国など東アジア諸地域の輸入増加にも留意しながら、小麦輸入が可能となった諸条件、及び北米や豪州小麦の流入に端を発する東アジアの小麦流通が変容する過程の解明を目的とする。本年度の研究実績は次の通りである。 1.基礎データの整備:戦前期の官庁や研究所、企業などが調査し発行した統計資料・報告書等、同時代の基礎資料を収集し、データの整理・解読・入力・分析などの作業を進めた。 2.北米に展開した日系商社の小麦・小麦粉取引に関する一次資料の調査・収集:コロナ禍の影響により、前年度に続き海外(アメリカ合衆国・イギリス)の文書館・図書館等が所蔵する資料を調査・収集できなかった。既に収集した、三井物産や三菱商事の北米小麦・小麦粉取引関係資料(米国国立公文書館所蔵、三井物産・三菱商事シアトル支店から押収された小麦・小麦粉取引関係の原書類)の内容を再度確認し分析した。また、1930年代半ばから1940年初頭のシドニー支店の所蔵史料(報告書、本店支店間・支店間の手紙等)を整理・分析し、30年代半ばから太平洋戦争開戦直前における日本・中国(「満州」を含む)とアメリカ・カナダ・豪州との小麦・小麦取引の展開について検討した。 3.研究成果の公表:三井物産および三菱商事の、シアトル支店・シドニー支店の一次資料を用いて、日中戦争開戦前後から太平洋戦争開戦直前にいたる時期の、日本(「満州」ほか日本の勢力下にある地域を含む)の北米・豪州小麦輸入の展開~後退~途絶の過程を、上記の2の作業結果をふまえて実証的に検討し、論文にまとめた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究の申請後に、任期2年の文学部長に選出された。申請時には予期していなかったことであり、辞退したが容れられず、2019年4月1日に就任した。 任期を終えた2021年度には、前年度からの新型コロナウイルス感染問題が継続し、オンライン授業への切り替え、感染状況に応じた対面授業の導入などの業務が前年度以上に増加した。このため、本研究課題に取り組む時間(エフォート)が低下した。 さらに、海外出張が不能となり、また国内出張も制限されたため、本研究の基礎となる資料調査・収集が大幅に制約された。このため、新たな収集資料を整理し分析する作業が困難となり、既収集史料等の再検討に限定されたため、本研究の進捗状況は予定通り進まず、やや遅れている。
|
Strategy for Future Research Activity |
本報告書作成時点においても、なおコロナ禍は予断を許さず、海外への渡航がむずかしい状況にある。また、国内出張や、各地の図書館等史料所蔵機関の利用にも一定の制約がある。2022年度半ば以降の状況の改善に期待したい。 本研究の当初の研究期間は2019~2021年度の3年間であるが、最終年度となる2021年度には、研究計画通りの研究の進捗は困難であると予想された。申請により研究期間の延長が認められたため、今後の状況の変化を見て研究計画を立て直し、2022年度には、研究を完了させるよう検討したい。
|
Causes of Carryover |
本年度には、コロナ禍の影響による日常業務(授業や学内諸業務)が増加したため、本研究課題に取り組む時間(エフォート)が低下した。予定していた米国・英国への海外出張による資料調査・収集を実施することができず、また、国内出張も制限された。 資料収集が制約されたため、新たに収集した資料の整理や、データ入力などの基礎作業を、アルバイトを雇用して実施することも制約された。 資料調査・収集を中心とする予算(旅費、謝金)が予定通り執行できなかった、次年度使用額が生じることになった。次年度(2022年度)には、既収集史料も使用して課題への接近をはかるため、物品費や謝金を執行するほか、資料調査・収集のための海外出張、国内出張が可能になれば、そのための旅費、及び収集資料の整理のための人件費・謝金等を使用する計画である。
|