2020 Fiscal Year Research-status Report
バジルドン・ニュータウンと戦後英国都市社会の変容:1949年~1986年
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19K01798
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
菅 一城 同志社大学, 経済学部, 教授 (70276400)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 20世紀 / イギリス / バジルドン / ロンドン / ニュータウン / 都市計画 / 人口分散 |
Outline of Annual Research Achievements |
申請時の「研究実施計画」にしたがって、英国バジルドン・ニュータウンの都市計画の側面を検討し、菅一城「英国ニュータウン政策における人口分散・都市計画・地域開発:バジルドン・ニュータウンの事例から」『経済学論叢』(同志社大学)第72巻1号(2020年8月)1~56頁として発表した。 ロンドンの過密人口分散の受け皿として1940年代に立案されたニュータウン政策は、大きな国家の強大な権限と専門家の知見を組みあわせて社会問題を解決するという理想のもと都心の過密を解決し、低密度の郊外住宅地に分散する政策として始まった。しかし、1950年代には、この「大きな政府」の財政負担が問題視され、採算性を改善するために収容人数を引きあげ、高密度化された。さらに1960年代末以降は、さらなる転入人口の受入れよりも、ニュータウン内部の住民にさまざまな選択肢を提供することが重視された。つまり、狭小な賃貸住宅だけでなく大規模な分譲住宅などライフコースの進展にあわせた多様な居住の選択肢を用意し、脱工業化に応じて工業から商業での雇用機会の確保の転換が図られた。この動きは1980年代にサッチャー政権のもとでニュータウン政策が停止される段階で、ロンドンではなく周辺地域の住宅需要に応じる方針が宣言されることで完結し、さらに住宅の不動産市場での価値と住民の満足を高めるために、商業地開発だけでなく、社会・娯楽施設の開発や社会の自動車化に対応した交通基盤の計画も行われた。 これと別に、道路や下水道などの社会基盤整備の財政負担が開発公社(入居者の家賃)と地方自治体(地域全体の地方税)のあいだでどのように按分されたのかを検討し、菅一城「英国ニュータウン政策における社会資本整備・社会的利益・住民負担:バジルドン開発公社、1949年~1986年」『経済学論叢』(同志社大学)近刊にまとめた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
おおむね申請時の「研究実施計画」どおりに論文の執筆をすすめている。 唯一「「研究実施計画」どおりでないのは、英国に渡航して史料を収集する作業が2020年度は、新型インフルエンザ対策の関係で実施できなかった点であるが、これまでに収集してきた史料を用いて上記の研究成果をまとめることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
上記のとおり、目下最大の課題は史料収集のための英国渡航が困難な状況にあることである。これについては申請者の努力では解決できないが、「研究実施計画」の2021年度分については、どうにか手元の収集済みの史料で対応可能であると考える。着実に予算執行をできるかどうかは今後の情勢次第と考えるが、何らかの研究実績を出すことは可能だと考える。
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Causes of Carryover |
史料収集のための英国渡航を予定していたが、新型感染症のために実施できなかった。 2021年度は可能になり次第、渡航を実施する。
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Research Products
(1 results)