2021 Fiscal Year Research-status Report
地域産業における学校誘致の意図、効果、評価―旧制高等工業学校の諸事例から―
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19K01801
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Research Institution | Osaka University of Economics |
Principal Investigator |
浅野 敬一 大阪経済大学, 経済学部, 教授 (30369946)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 高等工業学校 / 地域産業 |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度から延期された調査のうち、広島高工に関する追加調査を実施した。具体的には、前年度に整理した広島高等工業学校の卒業者データをもとに、広島および国会図書館で調査を行い、当時や戦後の卒業生の意識を同窓会誌等から把握した。 調査の結果、広島高工から広島や中国地方への就職は公務や軍関係が中心で民間企業は少ないが、卒業生や広島経済界がこうした状況を問題視するような記事・発言は確認できなかった(2022年度4月に調査した熊本高工についても、分析の途中ではあるが広島と同様の傾向がうかがわれ、熊本はさらに地元就職者が少ない)。これは、田村幸男『帝国憲法期の入学と就職』(2019)による、官立高工が国家の「産業士官学校」として人材を配置する役割を担ったという指摘とも合致する。 しかし、官立高工の多くは、地元の熱烈な誘致と多額の寄付により設立されている。地元経済界が国策への自発的な協力だけで誘致に動いたのか、疑問が残る。逆に、天野などは中央が地方に無理やり資金を提供させたと指摘するが、そうであれば誘致ではなく反対運動につながってしまう。地元の「意図」については、重化学工業地帯を抱える神戸との比較、高工設置県の議会の議論の分析を通じて、さらに検討する必要があると考えている。 なお、本年度も、Covid-19の影響で、大学文書館の訪問調査は広島のみで、熊本や神戸などは実施できなかった(熊本は上述のとおり2022年4月に実施)。そこで、国会図書館でインターネット公開されている各校の学校一覧など、まずはWeb資料を中心に卒業生などの動向を把握・整理した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
Covid-19の影響で、広島以外の大学文書館の訪問調査は実施できなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
研究期間の1年間の延長が認められ、2022年度は感染状況に落ち着きがみられるため訪問調査を実施できる見込みである(熊本は2022年4月に実施)。神戸のほか数か所の訪問調査が実施できれば、Web上で公開されている資料と併せて、卒業生の基本的な動向と同窓会の姿勢等はおおよそ把握できる。研究期間内には資料の収集と卒業生の状況把握等に作業を集中する計画である。
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Causes of Carryover |
広島以外の大学の文書館等の調査が実施できなかったため、次年度使用額が生じた。調査(出張)が再開できれば、当初の予定通り、旅費として使用する計画である。
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