2022 Fiscal Year Annual Research Report
地域産業における学校誘致の意図、効果、評価―旧制高等工業学校の諸事例から―
Project/Area Number |
19K01801
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Research Institution | Osaka University of Economics |
Principal Investigator |
浅野 敬一 大阪経済大学, 経済学部, 教授 (30369946)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 高等工業学校 / 就職先 / 機械工学 / 電気工学 / 応用化学 |
Outline of Annual Research Achievements |
これまで実施できなかった調査を実施した。具体的には、熊本、長岡、秋田、明治、金沢、福井の各高等工業の文書、卒業生名簿、同窓会誌等を後継の各大学を訪問し調査した。このほかに、国会図書館デジタルコレクションで閲覧できる「学校一覧」の情報を含めて、まずは卒業生の就職先の全体像を把握した。 その結果、学科によりかなり就職先が異なるため、高等工業学校卒業生を一括りにすると逆に実態が明らかにならない懸念が生じた。一方で、史料の残存状況から、卒業生の就職先を毎年把握すること困難であった。そこで、第一段階として、機械工学科(類似学科を含む、以下同じく)、電気工学科、応用化学科の3学科、すなわち重化学工業化に直結する分野に限定した。また、把握できる学校数が7校から12校と多かった1925、30、35、40年の卒業生に限定した、外注分を含めて約3,000名の初職データを整理した。そのうえで、第二段階として、5年後、10年後、15年後の就職先を整理した。 現在は詳細な分析を進めているが、①一部の工業地帯を除き地元産業界への人材供給(就職)は限定されていた、②就職先はきわめて限定されていた(ごく少数の企業、軍工廠、省庁など)に限定されていた、③時期に下るに従い転職を含めて軍や軍需産業に人材が集中していったなどの点は指摘できる。高等工業が技術者供給に重要な役割を果たしたことはたしかである。しかし、卒業生の動向からは、この時期の重化学工業のすそ野の狭さとその状況での軍需生産への傾斜が読み取れそうである。 なお、機械、電気、化学以外では卒業生が多い土木工学科と繊維関係の学科についても、同様の整理を行う計画である。また、醸造(広島)、鉱山関係(秋田、明治)、建築(福井)については、学科設置が特定の高工に限定されるため、個別具体的に考察することとした。
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