2019 Fiscal Year Research-status Report
Business Performance and Management of Japanese Manufacturing Companies in India
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19K01818
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Research Institution | Nanzan University |
Principal Investigator |
上野 正樹 南山大学, 経営学部, 准教授 (90379462)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 国際経営 / 経営戦略 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究目的は、インドにおける日系製造企業の経営業績の解明である。本年度は次の作業をおこなった。第一に、3業種(輸送機械・電気機器・情報通信)の連結売上高の上位企業でインド進出済みの企業17社を抽出した。第二に、抽出した親会社がもつインド子会社を特定し(74社)、市場攻略をおこなう子会社21社を抽出した。第三に、21のインド子会社の財務情報(8年度分)を収集し、売上高EBITDAマージンとROSのデータベースを作成した。第四に、親会社の特性を仮説とし、インド子会社の経営業績にかんする統計分析をおこなった。 統計分析から判明したことは次である。1つ目は、2010年代のインド子会社の経営業績はばらついており、高業績の企業も多くある。インドの日系は苦戦しているという従来のイメージとは異なっている。2つ目は、先進国売上依存を高めている親会社のインド子会社は、低くめている企業の子会社と周辺事業の子会社よりも経営業績が低い。3つ目は、グローバル経営規模で上位企業のインド子会社は、下位企業の子会社と周辺事業の子会社よりも経営業績が低い。 分析結果によると、親会社特性がインド子会社の経営業績を規定している。先進国重視やグローバル経営規模で上位という親会社特性のあるインド子会社の場合、その経営業績は低い。これらの特性は、売上高EBITDAマージンで7~8%ポイントの開きをもたらしている。新興国戦略の研究では、海外子会社の経営能力(現地適応の商品を開発する力など)に注目することが一般的である。しかし、分析から、親会社の特性にも重要性があることがわかってきた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実施計画の初年度、約500社のデータベースを作成する予定であった。しかし、インド子会社を抽出する作業において、経営業績との関連が薄い子会社が多数あることがわかってきた。たとえば、輸送機械分野の子会社には、駐在事務、工場施設の管理、物流、部品生産などの会社がある。これらは、市場攻略の成果としての経営業績をとらえる研究対象としてふさわしくない。このため、インドで販売をおこなっている21の子会社を抽出し、過去8年度分の財務データベースを作成した。その結果、研究対象の企業数は大幅に減った。一方、資源依存モデルをもとにした親会社特性と経営業績の分析は進展した。統計分析から一定の結果を導くことができたことから、研究はおおむね順調と考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度、統計分析まで進むことができた。次年度は分析結果をもとに論文を書きたい。研究調査には二つの方向性がある。第一に、統計分析をおこなった日系製造企業に対して、現地でヒアリング調査をする。第二に、インドにおける韓国企業や中国企業、またインド企業の経営業績を分析することである。前者の現地調査によって、統計分析の結果を考察するための情報を得ることができる。そのため第一の方向性を優先したい。しかし、現在のところCOVID-19の影響で、インドに入国できない。入国が可能になったら、現地調査を実行したい。不可能な場合、韓国、中国、インド企業の経営業績の分析に力を入れる。
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Causes of Carryover |
インド日系子会社の財務情報を購入するための経費のほとんどを所属大学からの研究助成と分担研究者の基盤研究(A)でまかなうことができた。また分析対象企業数が大幅に減り、データベースの作成補助に大きな費用がかからなかった。翌年度は、直近の財務情報の購入(データベースの更新)と現地調査をおこなうようにし、これに助成金を使用する。
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