2019 Fiscal Year Research-status Report
若手外国人社員の視点を通じた日本型プロアクティブ行動の質的分析
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19K01820
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
鈴木 伸子 同志社大学, グローバル・コミュニケーション学部, 教授 (40507620)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
トンプソン 美恵子 (平野美恵子) 山梨学院大学, 経営学部, 特任准教授 (20401606)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 外国人社員 / キャリア形成 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、日本企業で求められるプロアクティブ行動の特徴を質的手法で具体的に明らかにして、現在の日本企業が理想とする人材像とはどのようなものかを、外国人社員という異文化の視点を活かし、企業で有効に働くプロアクティブ行動を明らかにすことである。これによって、キャリア形成をめぐる企業と人材のミスマッチ解消に貢献することを目指している。プロアクティブ行動(Ashford&Black, 1996;Grant&Ashiford, 2008)とは、組織社会化研究で関心を集める概念で、「自分や職場環境に変化をもたらすような、先を読んだ行動」(Grant&Ashiford, 2008※筆者訳)と定義される。申請者の過去の研究にも、プロアクティブ行動に相当する新卒外国人社員の事例はあるが、その行動は先行研究とは異なり、日本企業内では評価されずに離職の一因となった。日本企業を対象とした尾形(2016)も、集団主義の影響を指摘しているが、量的手法のため具体的な文脈やプロセスが理解しにくいため、本研究は、質的手法を用い、個々のデータの文脈と変化のプロセスを鑑みた分析を行う。令和元年(2019年)から令和二年までは、インタビュー調査とその分析を行う予定で作業に取り組んできた。その際、文系・理系のグループごとに、2・4・7年目と入社年度を変えたデータを集める計画である。このうち文系は、申請者が過去の研究で対象としてきた7年目の外国人社員グループを主な対象としてデータ収集を行った。今年度は、この新たなデータと彼らの2・4年目の時点で収集したデータの再分析を行った結果、年次が進むにつれた行動の変容プロセスの一部がわかってきた。この成果は、経済団体向けの講演や 海外大学め向けの遠隔テレビ会議システムでの講演という形で発信した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
データ収集にあたっては、文系・理系に分けて、2・4・7年目と入社年度を変えたデータを集める計画であるが、これは、日本では新卒者を白紙の素材と捉える傾向があり、年次が上がるにつれ、組織側の態度も変わると予想されるためである。文系は、申請者が過去の研究で対象としてきた7年目の外国人社員グループに8名のうち、年末までに4名のデータを集め、彼らの2・4年目の時点で収集したデータの再分析を行った。その後、春休み期間中に集中的にインタビューデータを集める予定で対象者にアポイントを入れていたが、年明け以降にコロナウイルスの感染が拡大し、予定していた対面でのインタビューデータ収集が困難になった。そのため、データ収集は全体的に滞っているが、既に収集したぶんについては文字化と一次分析が進んでおり、仮説構築に向けて大まかな方向性は見えている。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究では、基本的に対面でのインタビューを予定していたが、今後は、感染状況の収束なども見つつ、zoomなどのTV会議システムを活用してのデータ収集など、代替案となる方法を模索したい。また、今後の不安材料としては、本研究が外国人社員の雇用という、景気の動向に左右されがちな領域を扱う点が挙げられる。これまでは景気拡大を追い風に外国人の雇用に積極的な企業が年々増えていたいたため、外国人社員の採用・育成を行う企業は一定数存在していた。しかし、今般のコロナショックによって企業経営が厳しくなると、これまでとは異なる外国人社員の雇用問題が現れるリスクがある。その場合、平時におけるデータ収集に比べて時代背景が大きく変化し、データの質そのものが変わってしまう恐れがある。これについては、データ収集が遅れ気味であることがプラスに転じる可能性はある。つまり、今後、収集する予定のデータはいずれもコロナショック以降のデータということであり、これらについては一貫性が保てると考える。
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Causes of Carryover |
コロナウイルスのために参加を予定していた学会が中止となり、繰越となった。次年度にはTV会議が増えることが予測されるため、PC環境を整えるための費用に充てる予定。
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Research Products
(2 results)