2022 Fiscal Year Research-status Report
若手外国人社員の視点を通じた日本型プロアクティブ行動の質的分析
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19K01820
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
鈴木 伸子 同志社大学, グローバル・コミュニケーション学部, 教授 (40507620)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
トンプソン 美恵子 (平野美恵子) 東京大学, 大学院総合文化研究科, 准教授 (20401606)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 外国人社員 / 留学生の就職活動 / キャリアポートフォリオ / 内省 / 自律学習 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、日本で働く外国人社員及び日本企業に就職を希望する留学生に対するインタビュー調査から得られたデータを用い、多様化した外国人社員の自律的な成長とキャリア形成を実現する人材育成ツール「キャリアポートフォリオ(以下、CP)」を開発することである。CPとは元々、教師教育で用いられる「ティーチングポートフォリオ(以下、TP)」(=教師が自らの授業実践を手がかりに教育理念の核を内省し、実践に一貫性を持たせると同時に将来に向けた自己成長を実現するための思考ツール)を基に筆者らが開発したものである。TPには自律的な成長を促すという特徴があり、CPもこのツールを利用する外国人社員が『異文化環境下でも自律的に成長する外国人社員』となることを目指している。科研申請時点までにパイロット的に開発したキャリアポートフォリオはあるものの、実際に使用してどのように内省が促されたか、使いにくいとしたらどう改善すべきかを検討し修正を繰り返すプロセスが必要である。そこで、この作業に取り組むべく、データ収集と試用の後に、再びCPの修正という調整作業を複数回行なった。こうした分析・開発の過程で明らかになったことは次の通りである。①ポートフォリオにおいて実際に達成したこと(エビデンス)とは、必ずしも自分が得意とするから取り組むとは限らず、”苦手だから取り組む”というケースもあるため、この動機の部分を内省によってしっかり見極めることが重要、②ポートフォリオが特定の特徴や志向に基づいて一元的に出来上がることは少なく、個人の内面に存在する複数の側面が反映されることが一般的で、ポートフォリオに書かれた内容も多層的になることが多い。そのため、内省後に現れる自分の等身大の姿や将来像も、全てを盛り込んだ唯一のものよりも、特定のテーマに基づいて幾つかの異なるパターンで描き出す方が現実をよく反映することがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
科研採択後の年度末よりコロナウィルスによるパンデミックが始まり、海外との往来が断絶したことで、海外大学卒の外国人社員や海外大学の大学生を対象者として想定していたデータ収集と試用のためのワークショップ開催に支障が発生した。そこで、当初計画を大きく変更し、就活を控えた国内大学に在籍する留学生グループをデータ収集の主な対象とし、彼らを対するワークショップを複数回実施しながら、データ分析を継続的に行った。この変更の結果、2021年度末(2022年)には留学生のキャリア教育に関する査読つき学術論文1本と単著1冊を執筆することが可能となり、2022年には共著1冊の出版も行い、一定の研究成果を残すことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでのデータ分析と試用の結果、CPは留学生の就職活動時の自己分析やそれに基づくエントリーシートの執筆にも有効であることがわかってきた。また、留学生を主な対象に切り替えたことにより、留学生に特化したキャリア教育に現在開発中のCPを応用する手法も明確になってきた。2023年度は、これらを踏まえた研究成果を発信すべく、9月にJSAA-ICNTJ2023(豪州日本研究学会研究大会/国際繋生語大会:於シドニー)にて口頭発表を行う予定である。その後は、CPを用いた教育実践(国内外におけるワークショップを含む)を展開すると同時に、そこから得られた知見も加味して実践研究論文を執筆して投稿する。
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Causes of Carryover |
本研究では海外調査および海外大学での成果発表ワークショップを研究計画に盛り込んでいたため、3年間のコロナ禍によりそれらの積み残しが生じた。その間に、研究計画を一部変更してデータ収集と分析を進めた成果として、2023年9月に豪州にて開催される国際学会にて口頭発表を行う予定である。そのための旅費・大会参加費として約35万円を見込んでおり、既に航空券は計上している。今年度前半には、分担者と当該の発表準備のための打ち合わせを予定しており、それに伴う国内旅費(目的地:東京×2回:約7万円)も見込んでいる。秋から冬にかけては、開発したCPを用いた海外大学でのワークショップを実施して最終成果にしたいと考えている。
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Research Products
(2 results)