2020 Fiscal Year Research-status Report
Study on self-regulated management and discretionary work sysytem
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19K01825
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
森田 雅也 関西大学, 社会学部, 教授 (40247896)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 裁量労働制 / 自律性 / 境界決定の自律性 / 仕事遂行の自律性 / 自己規制した管理 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、裁量労働制には「自己規制した管理」が適していることを実証的、理論的に明らかにすると同時に、自律的な働き方全般に「自己規制した管理」は広く有効であることを論証しようとしている。 今年度は、予定していた聞き取り調査が全く行えなかったため、文献や資料をもとにした研究から以下のような点が明らかになった。 初年度の研究成果として、「自己規制した管理」が機能し、裁量労働制が継続的に運用されるには、そのための組織風土の醸成という「土台作り」、管理者による「やらない仕事の決定」、長時間労働の「制度的抑止」の必要性を示した。これまではそれら個々の制度や取り組みを取り上げてきたが、今年度はそれらの制度と他の制度も含めた人事制度全体との関係のあり方を分析した。なぜなら、人事制度は内的整合性がある束であることが求められているからである。その結果、トップによる自律的な働き方に取り組むという方針の提示と周知の徹底が「土台作り」と「制度的抑止」に有効であること、評価制度や賃金制度が長時間働くほど有利になる形になっていないこと、管理者の評価項目に成果だけでなくプロセスも含まれていること、自律的な働き方・生き方を促すキャリア開発が行われていること、働き方の実態が絶えずフィードバックされて全社的な検討が行われていることが重要であると考えられた。 また、「自己規制した管理」を根付かせるには、短期の時間幅ではなく、より長期の時間幅で「自己規制した管理」が機能しているかどうかを評価することが必要であると考えられた。なぜなら、「自己規制した管理」は、これまで人的資源管理の重要な機能の一つ考えられてきた作業能率促進機能(人を働かせて能率を上げる)に異を唱えるものであり、管理原則の転換ともいえる大きな変化である以上、簡単には変えられず、長い時間幅をもって取り組んでいく必要があると考えられるからである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
本研究は、裁量労働制導入企業や裁量労働制対象者への聞き取り調査を中心に据えていたが、新型コロナウイルス感染拡大の影響で聞き取り調査を受け入れてくれる企業や対象者を見つけることが全くかなわなかった。また、2020年度はイギリスでの聞き取り調査も計画していたが、同様の理由で実現することができなかった。年度途中で、調査会社を介しての調査に切り替える等の計画変更を行うべきであったが、その対応を怠ったことが実態調査が行えなかった最大の理由である。 昨年度末から続くコロナ禍の影響で実態調査が進んでいないために、研究報告や論文公刊に至っていないことも含めて「遅れている」と自己評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度も引き続き新型コロナウイルス感染拡大のために、国内外を移動しての聞き取り調査を行うことは難しいものと予想される。そのため2020年度に予定していたが行えなかったイギリスでの聞き取り調査は断念することとした。一方、国内企業への聞き取り調査は、ひとつはオンラインでの聞き取りという形を裁量労働制導入企業に直接依頼して行い、もうひとつは調査会社を通じての裁量労働制対象者への聞き取り調査も行っていく。さらに、調査会社を通じて裁量労働制対象者への質問票調査を行うことで、質的、量的に裁量労働制の実態把握に努めていく。 本研究が目指すところは、①裁量労働制には、「自己規制した管理」が有効であることと②「自己規制した管理」が、裁量労働制のみならず、広く自律的な働き方には相応しい管理のあり方であることを明らかにすることである。そのため、コロナ禍で導入が促された自律的な働き方の一つであるテレワークの実態についても上記のような方法を用いて実態把握に努めたい。こうした実証研究から得られたデータを用いながら、「自己規制した管理」の概念を精緻化することと、その有効性を論証することに取り組んでいく。
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Causes of Carryover |
本年度使用できずに次年度使用となった額は864,114円(本年度直接経費1,000,108円の86.4%)であった。次年度使用額が生じた理由は、新型コロナウイルス感染拡大の影響で予定していた聞き取り調査のための国内、国外出張が全くできなかったために、旅費に予定計上していた経費や録音書き起こし費用としてのその他経費が支出できなかったためである。 次年度もおそらく国内外への出張は難しいものと思われるので、今後の研究推進方策にも示した通り、オンラインでの聞き取り調査を各社に依頼したり、調査会社を通しての質問票調査や聞き取り調査をしたりすることに計画を変更した。次年度使用額は、そのための費用に充てる予定である。
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