2021 Fiscal Year Research-status Report
次世代自動車技術をめぐる産業構造の変動:ネットワーク分析による実証研究
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19K01832
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Research Institution | Shiga University |
Principal Investigator |
岡本 哲弥 滋賀大学, 経済学部, 教授 (10411042)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 自動車産業 / 電動化 / サプライヤー |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、CASEに関する要素の中で、特にEの電動化を中心に研究を進めた。自動車産業において脱炭素に向けても急速に電動化へ舵が切られる中で、自動車メーカーや部品サプライヤーの電動化への取り組みが、取扱商品や系列グループとどのように関連しているのかについて、実証的に明かにした。 研究分析の結果、第1に,電動化戦略の積極性には,売上高研究開発費比率,株価純資産倍率,株価パフォーマンス,売上高が関連し,売上高研究開発費比率には,株価純資産倍率と売上高が影響している。第2に,取扱商品に関しては,部品メーカーは完成車メーカーよりも電動化戦略の積極性や売上高研究開発費比率が低く,特に,電動化への積極性については,内外装,シャシー/ボディーに関連する部品メーカーが低く,売上高研究開発費比率に関しては,パワートレイン,内外装,シャシー/ボディー関連サプライヤーが低くなっている。これら点からは,電装関連の部品サプライヤーは,電動化とは相性が良いものと解釈できる一方、特に電動化によって最も大きな影響を受けるされるパワートレイン系企業には,それらの積極性が見られない。第3に,トヨタ・日産・ホンダの系列グループに属する企業は,独立系を中心とする部品サプライヤーなどよりも電動化戦略への積極性及び売上高研究開発比率は高い。この結果は,系列の垂直統合構造にいるサプライヤーは,その恩恵を生かし,自社のコアコンピタンスを高めるべきであることを示唆している。 また、サプライチェーンにおける川下の中古車市場にも目を向け、レクサスなどの高級ブランドを対象に中古車価格に関する調査を行い、ベンツやBMWと比較をしながらレクサスの位置づけを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度は、コロナウイルス感染症の終息が見通せないのため、CASEのEに相当する電動化の研究を進めることができた。また、研究成果についても、学会のオンラインで発表などを通じて、研究成果の公表も進めることができた。また、コロナウイルスによって当初計画の修正が余儀なくされたなかで、サプライチェーンの川下の中古車市場にも焦点を当てた研究を進めている。 ただし、当初の予定した計画に徐々にキャッチアップしつつあるものの、現時点ではやや遅れていると思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
CASEの観点から、部品サプライヤーの分類を意識しつつ、サプライヤーと自動車メーカーの取引関係を二部グラフと捉えてネットワーク分析の展開を試みることで、CASEごとに切り分けて研究するよりも効率的かつ明確に特徴を把握することにつながるものと目論んでいる。具体的には、昨年度入手した調査レポート「2021年版 主要自動車部品255品目の国内における納入マトリックスの現状分析」に対して、多角的にデータ分析すること通じて、サプライチェーンの分析にCASEの観点を取り込むことができるものと考えている。
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Causes of Carryover |
コロナウイルス感染症の影響により、学会がオンライン開催なることで出張費が少額で済んだこと、本年度に予定したノートパソコンの購入を次年度に延期したことで額の生じた主な要因である。 次年度の計画において、今年度の計画で未達の部分を織り込みながら研究を遂行し、予算についても使用する予定である。
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