2021 Fiscal Year Research-status Report
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19K01837
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Research Institution | Shizuoka University of Art and Culture |
Principal Investigator |
高島 知佐子 静岡文化芸術大学, 文化政策学部, 教授 (70590404)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 伝統工芸 / 和紙 / 刃物 / 陶磁器 / 小規模産地 |
Outline of Annual Research Achievements |
伝統工芸の中でも存続が難しいと思われ、かつその実態に関して不明点の多い小規模産地・事業者について研究を進めてきた。2021年度は、2020年度に重点的に調査を行った石州和紙、並びに和紙という伝統工芸が支える地域文化(石見神楽)に関する研究の一部を公開した。これを通して、手漉きにこだわり、量産化しない和紙事業者の独自の市場開拓の取り組み、伝統工芸と地域文化の継承・創造の関わりの一端を示した。このほか、近年、海外輸出額が増加し、海外展開が盛んな刃物産地に関して、複数産地の調査(ヒアリング、文献調査等)を行い、その一部を論文にまとめた。刃物産地は量産化で拡大した地域とそうではない地域があること、生産する刃物の用途によって産地のあり方、事業者の規模、産地内の分業構造が異なることなどがわかった。また、問屋を介した産地間のつながりも強く、他の伝統工芸とは異なる様相が見えてきた。上記に加え、複数の和紙産地に関する資料収集を行い、和紙と刃物について全国的な産地の状況を整理するとともに、近年増えつつある産地内の複数工芸が集まる工芸見本市のようなイベントを調査し、産地の工芸振興の取り組みも調べた。製品としての伝統工芸品の特性、生産方法や販路によって小規模産地のあり方は異なるが、産地内外の同業者、異業種との関係性が新たな活動の創出、新しい販路の可能性をもたらすなど、内外との「つながり方」が存続に影響を与えていることがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の予定では、国際学会で石州和紙に関する研究を発表する予定であったが、海外渡航制限によりエントリーを断念した。また、和紙と陶磁器の事業者に対し、フィールドワークで個別ヒアリングを行う予定であったが、感染症の拡大から実施できなかった。これらは2022年度に行う予定である。断念、延期したものもあるが、研究の一部は公表でき、アクセスが容易な近隣の産地、事業者の調査は行うことができ、研究成果をまとめる目処はたちつつある。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度は和紙事業者、刃物の小規模産地(土佐)、陶磁器の小規模産地(三川内焼と砥部焼)の産地と事業者へのヒアリング、フィールドワーク調査を行う。また、日本の伝統工芸の海外展開先であり、輸出が伸びているアメリカとヨーロッパ市場の調査を行う。海外調査においては、これまでの調査で明らかになっている見本市以外のアクター(現地商社、日本文化発信拠点等)、特に1970-1980年代(またはそれ以前)から日本の工芸を扱い、産地とつながりのあるアクターを調査する予定である。加えて、近年研究が増えつつあるヨーロッパの工芸研究、工芸産地の取り組みを調べることで、日本の伝統工芸産地・事業者の特徴と示し、これを踏まえて小規模産地の存続について研究をまとめる。具体的には、学会での研究発表、研究論文の投稿を予定している。
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Causes of Carryover |
海外調査や国際学会での発表を取りやめたため、旅費の多くを2022年度に繰り越すことになった。また、国内調査も、感染症拡大時期と調査予定時期が重なり、遠方の地域の調査が実現できなかったため、この分も2022年度に持ち越すことになった。
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Research Products
(3 results)