2019 Fiscal Year Research-status Report
国内ハイテク中小企業群におけるイノベーション創出とその成功要因に関する研究
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19K01840
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Research Institution | J. F. Oberlin University |
Principal Investigator |
鈴木 勝博 桜美林大学, 大学院 経営学研究科, 准教授 (40293013)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | イノベーション / 中小企業 / R&D / イネイブラー / 競争環境 / 組織文化 |
Outline of Annual Research Achievements |
2019年度は (i) 分析フレームワーク・分析モデルの改良と (ⅱ)対象企業の予備分析(知財面)を実施した。 (i) については、当初の研究計画では、オスロマニュアルにもとづく標準的な調査票と分析モデルを用いる予定であった。先行研究からは、イノベーションの各種イネイブラーが判明しつつあるが、今回の採択を機に再精査した結果、(ア) 当該企業の事業環境と競争状態、(イ) イノベーション創出を支える組織要因(文化等)といった、伝統的な経営学で取り扱われている要因については、定量的な先行研究事例が少ない事に気づいた。そこで、分析手法自体についても学術的なオリジナリティを出す事を目指し、(ア)、(イ)に関する網羅的な文献レビューを行い、分析フレームワークの改良を遂行した。事業環境や競争状態に関する設問、ならびに、組織文化に関する多層的なフレームワーク(Cameron他, 2006等)を組み込み、外部圧力や組織的対応について、イノベーションへの寄与を測定する予定である。この検討結果については学会(11月)で報告し、改良・修正への示唆を得ている。 また、上記と並行して、調査対象企業のリストを作成した。当初計画の (a) 「サポイン企業」に加え、学会で示唆を得た (b)「元気なモノ作り中小企業300社」も対象に加え、企業の基本情報や保有技術に関するリスト(2,300社)を整備した。当初計画(1,500社)よりも対象件数が増えているが、「業種による違い」等まで含め、有意性の確保を目指すためである。 加えて、(a) から過去3年以内に採択された100社を無作為抽出し、主要イネイブラーの一つである特許データとひもづけ、予備分析を行った。通常の中小企業と異なり、かなり活発な知財関連活動が再確認できたため、「知財マネジメント」を含む設問も調査票に加え、イノベーションへの寄与を詳細に探る予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
遅延の最大の理由は、2つある。(1) 一つ目の理由は、分析フレームワーク・分析モデルの再検討と改良に想定以上の時間を有してしまったことであり、これが最大の理由である。また、これに加えて、(2) コロナウィルスの蔓延により、調査時期を後ろ倒しせざるをえない状況となっている。 (1) については、当初計画では、国内のハイテク中小企業を対象に、標準的な調査手法や分析手法を用い、国際比較可能な分析を行う予定であった。しかしながら、今回はさらに一歩踏み込み、中小企業に対する定量的なイノベーション研究では、これまであまりスポットライトが当たってこなかった「競争環境」や「組織文化」の影響まで測定できるよう、分析フレームワークを拡大した。これらの要素は、伝統的な経営学における「競争戦略論」や「組織論」と深く関係するが、関連文献のレビューに予想以上に時間がかかり、晩秋までずれこんでしまったことが最も大きな原因である。ただし、本作業は、本研究のアウトプットの質を高める上で、必要不可欠であったと考えている。 また、(2) は付随的な要因ではあるが、やはり調査進捗の遅れに影響している。 当初は、上述の(1) に伴い、アンケートの時期を当初計画の2019年秋から、2020年春にシフトする方針とした。一般に、1月から年度末の3月にかけては多忙な中小企業が多く、アンケート回収率が顕著に下がる可能性があるためである。ところが、2020年2月下旬以降、コロナウィルスの影響によって経済活動が停滞し、また、大学においても学生アルバイトの雇用が不可能な状況となっており、調査時期を再度延期せざるを得ない状況に陥った。コロナショックは中小企業の経営にも大きな影響を与えていることが推察されるため、これが少しでもやわらぎ、各企業が回答する余裕をもてるであろう2020年秋季(9月以降)に、調査を実施したいと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度前半は、(1) アンケートの実行に向けた具体的な準備活動、ならびに、(2) 分析のためのデータ整備(業績データと知財データのひもづけ等)を行う。2020年度後半は、(3) (2)のデータのの予備分析、ならびに、(4) アンケート調査の実施と分析を進める予定である。 (1)に関しては、分析フレームワークを改良に伴い、現在、当初の想定よりも調査票の設問数が多くなってしまっている。今後、精査して設問数をスリム化し、回答者にストレスをかけない調査票の実現を目指す。あわせて、調査票の印刷、ならびに、ウェブサイトを準備する予定である。これらの作業は、8月末までに完了する予定である。 また、(2)に関しては、企業業績データ(TSR)と有償の知財データベースを購入し、2019年度に整備した企業リストとの紐づけを行う。本作業は、当初計画では、アンケート調査の後に予定していたが、これを前倒し、アンケート実施前でも可能な作業を先に実施する方針とする。企業業績については、コロナショック以前の二時点データ(売上、従業員数、等)を購入し、企業業績を測るアウトプット指標(売上成長率、従業員数の拡大率、等)を整備する。 (3)に関しては、(2) のデータの一次統計分析に加え、各企業の「規模」、「業種」、「技術」、「知財」といった付随情報とアウトプット指標との関連性を調べる。本研究の調査対象は、わが国を代表するイノベーティブな中小企業群であるため、この予備分析自体、一定の学術的価値を有する可能性があると考えている。 (4)に関しては、アンケート回収率を向上させるため、2020年秋に調査を遂行する。今回、全社へ印刷した調査票を郵送する予定ではあるが、のちのデータ入力期間を短縮するため、極力、ウェブでの回答を促す予定である。コロナショックに伴う意識変容に伴い、ウェブでの回答率が向上することを期待している。
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Causes of Carryover |
「進捗状況」でも報告したように、(1) 分析フレームワーク・モデルの改良、ならびに、(2) コロナショックの影響、により、調査の遂行が全般的に遅れていることが、次年度使用額が生じた理由である。(1) に関しては、換言すれば、調査の準備段階における、調査票の「基本設計の再検討」に時間がかかってしまったことになる。そのため、当初計画にて提示した基本的な研究実施フロー自体には大きな変更はない。当初、2019年度に予定されており、未遂行の調査プロセスに関しては、2020年度に粛々と進めていく予定である。 したがって、次年度使用額(127万3,508円)の具体的な使途についても、当初計画から大きな変更はない。ただし、① 「企業リストの一次整備に関しては、アルバイトを雇用せず、研究代表者のエフォトのみで完了できたこと」、ならびに、② 「調査規模を大きくしたこと」が影響し、各費目への費用配分率は当初計画から変わる見込みである。 具体的には、(a) 「物品費」として、企業業績データ(東京商工リサーチ)に60万円, (b) 「その他」項目として60万円(① アンケートの郵送・回収費34.5万:郵送2,300社+回収575社=2,875社×120円, ② 印刷費 25.5万円)、(c) 「人件費」7万3,500円(調査データの入力: 時給1,000円×73.5時間)を予定している。
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Research Products
(1 results)