2020 Fiscal Year Research-status Report
国内ハイテク中小企業群におけるイノベーション創出とその成功要因に関する研究
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19K01840
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Research Institution | J. F. Oberlin University |
Principal Investigator |
鈴木 勝博 桜美林大学, 大学院 経営学研究科, 准教授 (40293013)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | イノベーション / 中小企業 / R&D / 探索と深化 / 情報源 |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年度は、(ⅰ) 知財データベースの整備、(ⅱ) イノベーションに関する各種情報源や地域性の寄与に関する予備分析とその結果の公表、 (ⅲ) モデルの精緻化とアンケートの整備、を実施した。 (i) に関しては、昨年度抽出した企業群(約2,300社)について、過去10年間の出願特許を抽出し、データベースの作成を試みた。一次的に抽出されたデータは約10万件だが、企業の名寄せに予想以上の時間を要し、2021年5月末に整備を完了する予定である。 また、(ⅱ) に関しては、リソース不足の中小企業群がイノベーションを起こす際、様々な情報源からの情報収集が重要になると考えられるが、これをアンケートで調査するための「標準化された設問」はまだ存在しない。そのため、申請者が保有する過去の調査データをもとに、地域の観点も交え、イノベーションと情報源の活用に関する予備分析を行った。活用したのは、ハイテク中小企業約400社のイノベーション創出に関するアンケート結果(2012)で、本プロジェクトのベースとなった調査だが、情報源についてはこれまできちんと分析を行っていなかった。今回の分析の結果、(ⅰ) 最重要視されているのは「顧客からの情報」、(ⅱ) 複数の情報源を同時活用する傾向の存在、(ⅲ) イノベーションの種類によって、有意に寄与する情報源が異なること、などを検証することができたため、査読付きジャーナル(研究ノート)にて公表した。設問の改良点も明らかになったため、下記(ⅲ)に反映する予定である。 (ⅲ) アンケートについては、OECDのオスロマニュアルに立脚しながら、昨年度検討した「企業文化」に関する設問や、(ⅱ)で検討した「情報源についての改良設問」を加え、おおむね完成している。2021年度6月をめどにアンケートを実施し、2021年の秋から冬にかけて分析し、成果の公表を試みる予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
2019年度は「分析フレームワークの再検討に時間を要したこと」ならびに「コロナウィルスの影響による調査時期の後ろ倒し」のために遅れが生じ、2020年度は遅延した状態からのスタートとなった。 今年度は、上記『研究実績の概要』で述べた2つの活動、すなわち、(ⅰ)「知財データベースの整備」、ならびに、(ⅱ) 「イノベーションのための各種情報源に関する予備分析」に想定以上の時間がかかってしまったため、初年度に生じた遅延をリカバーすることができなかった。 なお、これに伴い、2020年秋に実施する予定であったアンケート調査もあわせて遅延しているが、その原因としては、「上記の二つの活動(ⅰ),(ⅱ)の遅れ」に加えて、「第5回全国イノベーション調査」(NISTEP, 2021年11月実施)と時期が重なってしまったことが挙げられる。この「全国イノベーション調査」は、本研究と同様に「オスロマニュアル」に立脚した調査であり、本研究の対象企業群に対しても調査票が配布されていた可能性が高い。まったく同じような時期に、類似した設問を含む調査票を配布することは、アンケートの回収率向上の観点からは好ましくないため、調査時期をずらすことが適切だと判断した。 なお、コロナ過のもと、すでに1年3カ月が経過し、その間に蓄積されてきた知見やファクト(中小企業景況調査など)も存在する。2021年6月に予定しているアンケートでは、そのような最新の知見も踏まえながら、有意義な調査としていきたい所存である。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度前半は、(1) 「アンケートの実施」、(2) 「分析のためのデータベース整備(知財データベースの完成・実績データとのひもづけ)」、ならびに、(3) 「(2)にもとづく予備分析」を行う予定である。また、2021年度後半は、(4) 「アンケート結果の分析」、ならびに、(5) 「早期の成果公表に向けた研究活動」に注力する予定である。 このうち、(1)に関しては、2020年度に実施した「情報源」に関する予備分析の成果と気づき(例:情報源の「重要度」に加え、情報源への「アクセス頻度」も問う、等)を取り込むとともに、2020年度の「中小企業景況調査」の実態等もあわせて考慮し、「逆風下でのイノベーション創出に関する考え方」なども設問に盛り込みながら、6月中のアンケ―ト実施を目指す予定である。 (2)に関しては、2021年5月中に「知財データベース」の名寄せを完了させ、2020年度に購入した「企業業績データ(TSR)」と接続する予定である。このデータセットを活用すれば、対象企業の基本集計が実施可能となり、あわせて、(3)に挙げた「予備分析」、すなわち、「企業年齢」・「従業員数」・「業種」・「保有技術」・「CEOのプロフィール(院卒かどうか等)」といった企業の内部情報と、アウトプットとしての「知財活動」との関連性を調べることが可能となる。最終的には、このデータセットをアンケート結果に接続するが、この予備分析自体からも一定の学術的なアウトプットを生み出すことを目指す。 なお、(1)に関しては、全社に紙の調査票を郵送する予定ではあるが、データ入力期間を短縮するため、オンラインのアンケート・サイトを併設する予定である。(4)の「分析活動」の期間は限られるが、外部の高度人材(統計スキルをもつ人材)をうまく活用しながら、なるべく短い期間で成果を出し、外部への成果公表につなげていきたい所存である。
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Causes of Carryover |
「進捗状況」でも報告したように、2020年度は、(ⅰ)「知財データベースの整備」、ならびに、(ⅱ) 「イノベーションのための各種情報源に関する予備分析」について想定以上の時間がかかってしまったことにより、初年度に生じた遅延をリカバーできなかったことが、次年度使用額が生じた理由である。なお、(ⅱ)からはいくつか興味深い発見があり、「査読付き研究ノート」として外部に公表できたこと自体は、必ずしも悪くなかったのではないかと考えている。
さて、2021年度も、基本的には当初計画にフローにのっとり、未遂行の調査プロセスを粛々と進めていく予定である。特に重要なのは「アンケートの実施」であるが、次年度使用額(66万5,686円)の具体的な使途については、(a) 「その他」項目として60万円程度(① アンケートの郵送・回収費34.5万:郵送2,300社+回収575社=2,875社×120円, ② 印刷費 25.5万円)、(b) 「人件費」6万5,600円(調査データの入力: 時給1,000円×65.6時間)を予定している。
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Research Products
(2 results)