2022 Fiscal Year Research-status Report
国内ハイテク中小企業群におけるイノベーション創出とその成功要因に関する研究
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19K01840
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Research Institution | J. F. Oberlin University |
Principal Investigator |
鈴木 勝博 桜美林大学, 大学院 国際学術研究科, 教授 (40293013)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | イノベーション / 中小企業 / 探索と深化 / 情報源 / サポーティングインダストリー / 長寿企業 |
Outline of Annual Research Achievements |
2022年度は、(1) 前年度、英文誌(Information Engineering Express)に投稿した論文が採択され、追加分析を加筆した最終稿を提出したことに加え、(2) アンケート調査の再順延と基本方針の変更、ならびに、(3) 前年度に整備した結合データ(企業業績+知財)の予備分析を行った。 (1) については予想以上に審査が遅れ、今年の1月末にアクセプトの通知があった。この間、若干の追加分析を行っていたため、これを追記して3月末に最終稿を提出した。種々の情報源の「イノベーションへの寄与」について、国内中小企業を対象とした定量的な研究は数少ないため、一定の有意義な成果だと考えている。 また、(2) に記した再順延については、2022年度が、科学技術・学術政策研究所による「全国イノベーション調査」の実施年と重なってしまったことがその理由である。本研究と同様、オスロマニュアルに準拠した全国調査のため、対象企業にとっては重複的な調査となり、回答率が下がる可能性が高いため、順延を決定した。 なお、本研究のアンケートはオスロマニュアル第4版 (2018) に準拠する予定だったが、研究代表者が保有する過去の調査データとの結合を目的に、第3版(2005)をベースとする方針に変更した。その理由は、(3)の予備分析の結果、国内を代表するハイテク中小企業は、コロナ禍等を乗り越えながら、息長く緩やかに成長を続ける様相が判明してきたからである。実際、ターゲット企業2000社の「企業年齢」は平均49年であり、100年を超える企業も存在する。「技術を駆使しながら、長期にわたって存続し続ける中小企業」という観点は、研究代表者の知る限り、先行研究でもほとんど取り上げられてきていない。残り1年、最新の調査結果と過去データをあわせた長期2時点データ(10年間隔)をもとに、その実像の解明に迫っていきたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
今年度は、予定していたイノベーション調査を再順延することになってしまったため、研究プロジェクトとして「遅延している」と認識している。前述のとおり、その直接要因となったのは「全国イノベーション調査」の実施年と重なってしまったことにある。「全国イノベーション調査」の存在自体はかつてより認識していたが、2022年では無く、2023年が調査年だと誤認していたのは研究代表者のミスであった。 一方、この間に、(i) ジャーナルペーパーが採択されたこと、ならびに、(ii) 昨年度整備したデータに関する予備分析の結果、我が国のサポーティング・インダストリーが「緩やかに成長する、ハイテクかつ長寿の中小企業」に支えられている様相がわかってきたことは、一定の成果であったと考えている。 なお、我が国における「老舗企業」や「長寿企業」については、これまでにも先行研究や書籍が存在しており、日本に特有な事例として海外でも認知されている。しかしながら、サポーティング・インダストリーに属するハイテク中小企業においても、同じような傾向があることは、これまであまり取り上げられてきていないように思われる。 本プロジェクトでは、中小企業におけるイノベーション創出のイネイブラーを解明することに加え、テクノロジーを活かしつつ、企業として長く存続していくためのキーファクターに関する研究を、残り1年、全力で遂行していきたい所存である。
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Strategy for Future Research Activity |
ハイテク中小企業におけるイノベーション創出のイネイブラーに加えて、「長寿」を成立せしめる要因についてもあわせて解明するため、現在、関連する先行研究を精査中である。いわゆる「老舗企業」に関する事例研究の文脈では、「三方良しの精神」、「潤沢な内部留保」、「同族経営」といったキーワードが挙げられているが、今後はこのような諸要因を整理したのちに、アンケート調査票に関連する設問を加え、2023年7月にアンケートを実施したいと考えている。 また、並行して、2023年5月から8月にかけ、結合データ(知財データ・業績データ)についてのさらに詳細な予備分析を行うとともに、9月から11月にかけてアンケート調査データと結合し、最終的な回帰分析等を行っていく予定である。 なお、これらの分析結果については、秋口の学会(研究・イノベーション学会など)で速報として報告するとともに、2024年夏の Academy of Management Annual Meeting で報告できるよう、2024年1月初旬までに 英文の速報論文をまとめていきたいと考えている。
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Causes of Carryover |
「進捗状況」でも報告したように、アンケート調査の回答率をある程度確保するため、アンケート調査を順延したことにより、次年度使用額が生じた。 2023年度は、今年度の予備分析で判明した新たな「ハイテクかつ長寿の、イノベーティブな中小企業」の実像や成功要因について、これまでの知見を集約した調査を粛々と遂行していきたいと考えている。 次年度使用額の直接経費(約59.7万円)の使用計画としては、(a) 「その他」項目として52.9万円(① アンケートの郵送・回収費38.2万:郵送2,000社+回収400社=2,400社×160円, ② 印刷費 14.7万円)、(b) 「人件費」6.8万円(分析補助: 時給2,000円×34時間)を予定している。
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Research Products
(1 results)