2019 Fiscal Year Research-status Report
ライフサイクル成熟転換期の戦略形成プロセスと多国籍企業:アメリカ自動車産業の事例
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19K01841
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
三嶋 恒平 慶應義塾大学, 経済学部(三田), 准教授 (90512765)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | アメリカ / 自動車産業 / 戦略形成プロセス / イノベーション / ライフサイクル / 成熟・転換期 / 多国籍企業 / フィールドワーク |
Outline of Annual Research Achievements |
2019年度の主たる研究実績は次の3点であった。 第1に、アメリカ自動車産業に関するマクロデータや先行研究の整理であった。2019年度はライフサイクルの成熟期・転換期における企業行動、個別企業の戦略形成プロセスを通じたアメリカ自動車産業における戦略形成プロセスとそこでのイノベーションとの相互連関のメカニズムに関する先行研究をサーベイした。あわせて、アメリカ自動車産業に関するマクロデータ、特に外資系企業の進出、投資動向とそれらのアメリカ企業との取引関係を整理した。 第2に、アメリカ自動車産業における実態調査の進展であった。2019年度はアメリカの自動車関連企業5社ほどの訪問調査を行った。これら実態調査では工場見学を通じて量産機能、生産技術に注目し、研究開発機能、調達機能について確認した。あわせて、これらを支える生産性やリードタイム、その基礎となる作業標準や改善活動、小集団品質活動も検討した。 第3に、研究代表者のアメリカRutgers Business SchoolでのVisiting Scholarとしての在籍や国際学会への参加を通じて、海外研究者との研究交流を深め、研究ネットワークを構築したことであった。2019年度はAOM(Academy of Management)ボストン大会、ISA(Industry Study Association)ナッシュビル大会、AIB(Academy of International Business) USNE coferenceといった国際学会に参加し、参加者と本研究に関する議論を行った。また、Rutgers Business Schoolにおける国際経営、経営戦略論関係の研究者と常時議論する機会を設け、考察を深めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究は実態調査の繰り返しによる実証的な研究を目指し、アメリカ自動車関連企業に関する現地調査を徹底的に行う予定であった。しかし、コロナウイルスのアメリカおよびグローバルでの感染拡大により、調査対象となる企業が訪問調査を受け付けなくなったことから、実態調査を予定通りに行うことができず、進捗状況としてやや遅れていると判断せざるを得なかった。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度でも上にあげた進捗の障害は解消されない。WHOやIMFなどによるとコロナウイルスやそれがもたらす社会経済への影響は今後も続くとされる。それゆえ企業側の訪問調査の受け入れに対する非常に消極的な姿勢は、2020年度にはより顕著になると考えられる。こうしたことから実態調査に重きをおいた本研究はその根本的なありようについて再考察する必要に直面している。そこで応募申請書で研究方法の改善もひとつの課題として挙げたことを踏まえながら、次の2つの方策により、本研究は研究方法の進化を果たし、研究の推進を目指したい。 第1に、オンラインでの調査対象へのアプローチである。これまでオンラインでの調査対象へのアプローチは既知の人間を除くと行ったことはなかった。しかし、今後はオンラインでより積極的にアプローチせざるを得ず、そうしたアプローチの制約を明らかにし、それを突破する方法を考察していく必要があるだろう。アプローチ方法、オンラインでの議論方法、フォロー等調査の各段階の設計見直しが必要である。場合によってはアンケート調査も必要になるだろう。 第2に、2次データの発掘、活用である。アメリカ自動車産業にはいくつかの2次データが有料あるいは無料で存在する。そこで本研究はこうした2次データの整理をしながら、アメリカ自動車産業の実態解明を目指す。 以上より応募段階では150社への実態調査をひとつの目的としたが、この数値目標の達成は厳しいかもしれない。しかし、上記2つの方法により、よりマクロな視点から対象にアプローチするとともに、オンライン調査により対象に接近することで、従来の調査方法では不明であった点を解明することができるとも考えている。それゆえ、結果的に、実態調査の対象数の減少を補うとともに、新発見に結びつくことも期待できることから、本研究の遂行に問題はなく、さらには推進していけると考える。
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Research Products
(1 results)