2020 Fiscal Year Research-status Report
ライフサイクル成熟転換期の戦略形成プロセスと多国籍企業:アメリカ自動車産業の事例
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19K01841
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
三嶋 恒平 慶應義塾大学, 経済学部(三田), 准教授 (90512765)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | アメリカ / 自動車産業 / 戦略形成プロセス / イノベーション / ライフサイクル / 成熟・転換期 / 多国籍企業 / ケイパビリティ |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年度は主たる研究実績は次の2点であった。第1に、アメリカ自動車産業に関するマクロデータや先行研究の整理であった。このサーベイにおいてはライフサイクルの成熟期、転換期における企業行動の特質の抽出に焦点を当てた。特に転換期の典型事例として、デラウェア州における自動車完成車組立工場の撤退を検討した。従来、アメリカ自動車産業の衰退の象徴としてデトロイトが取り上げられることが多く、デラウェア州に関する先行研究は十分ではなかった。しかし、一時全米生産台数の6%ほどを占めた完成車生産台数は2021年時点でゼロであること、電気自動車の組立工場を誘致しようとしたものの失敗したことなど、成熟期にあるアメリカ自動車の苦境がより顕在化しているのがデラウェア州であると考えられる。また、自動車産業以外からの新規参入企業が検討されている一方、既存企業の転換は十分検討されてこなかったが、デラウェア州の検討からこれらについても示唆を得られると考えている。 第2に、研究代表者がアメリカのRutgers Business SchoolにおいてVisiting Scholarとして在籍しながら、アメリカの研究者との研究交流を深め、本研究についても議論を行ったことであった。これを通じてイノベーションや戦略形成プロセス、動態的なケイパビリティといった点に関する理論的見識を深めることができた。こうした理論研究は、従来、ライフサイクルの発生期、成長期における企業を事例としてきた一方、成熟、転換期における企業行動を事例としたことは多くはなかった。しかし、現在のアメリカ自動車産業で生じていることは転換期における企業の戦略形成であるものの、その理論的含意は未だ明らかになっていない。そのため、アメリカでの議論は本研究の深化に欠かせないものとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究は実態調査の繰り返しによる実証的な研究を目指し、アメリカ自動車関連企業に関する現地調査を徹底的に行う予定であった。しかし、新型コロナ感染症のアメリカでの感染拡大により、実態調査を予定通りに行うことが厳しくなった。そのため、フィールドワークの代替手段として、文献研究や2次資料の収集に努めた。結果として、研究成果の報告が遅くなっているが、その分、分厚い記述に基づく研究が可能となるよう努めている。
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Strategy for Future Research Activity |
新型コロナ感染症によるフィールドワークの実施困難性は2021年度も解消されないと考えられる。それゆえ、本研究は2020年度に引き続き、2次資料や既存研究のサーベイに基づきながら、成熟、転換期の企業行動と戦略形成プロセスを示していこうと考えている。デラウェア州の停滞事例はアメリカ自動車産業における停滞においても先行していると考えられ、デラウェア州とアメリカ自動車産業全体を比較させながら研究を進めていく予定である。あわせて、ライフサイクルの位置付けを軸としながら、アメリカ、日本の自動車産業を比較考察していこうと考えている。
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Causes of Carryover |
新型コロナ感染症により実態調査を行うことが不可能になり、当初予算よりも使用金額が少なくなった。2021年度は実態調査予算を2次資料収集に回す予定である。
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Research Products
(1 results)