2020 Fiscal Year Research-status Report
後発企業効果をめぐる長短期パターンの比較研究ー医薬品業界と食品業界を中心にー
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19K01842
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Research Institution | Chuo University |
Principal Investigator |
久保 文克 中央大学, 商学部, 教授 (00256017)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 後発企業効果 / トップ逆転 / 後発の壁 / ブランドの壁 / 消費者の壁 / 革新的企業者活動 |
Outline of Annual Research Achievements |
商品の3市場のうち、まずウスターソース類市場のオタフクであるが、販路というリソースの壁が、後発企業効果を大幅に遅らせたのであり、広島のローカル企業が全国展開していくためには、お好み焼き市場の普及・拡大と全国の消費者へと商品を送り届ける販路を同時進行的に拡大していく必要があった。そこに輪をかけたのが、トップブランドの壁と表裏一体の関係をなしていた消費者の味覚の壁であり、「ソースはさらっとしたもの」という食品特有の消費者の固定観念を変えることは容易なことではなかった。 こうした消費者の壁を克服しつつブランドを消費者に浸透させていくこと、広島のローカルメーカーゆえの販路の壁を乗り越えていくこと、両者はコインの裏表のような関係をなしていた以上、同時進行的に解決していくのは容易ではなかった。オタフクソースに残された途とは、消費者に自社商品の魅力を時間がかかっても地道に伝えていくマーケティング活動であり、その魅力を発揮できるお好み焼き市場そのものを業務用から一般家庭という新たな市場へと普及・拡大していき、新たな販路も作り出していく以外に方法はなかったのである。 続いて、即席麺市場のサンヨー食品の事例だが、トップ逆転までに長期間を要したオタフクソースとは異なり、短期間で後発企業効果を実現させたのがサンヨー食品である。即席麺のパイオニアでありガリバー的存在だった日清食品を、前橋市のローカル企業サンヨー食品が逆転できた要因とは何だったのであろうか。最大のポイントとは、徹底したコスト削減によって捻出した資金をスープの味付けに回すことによって、日清食品をも凌駕する差別化商品を誕生させた点にあった。その典型商品が、ガーリックスープと乾燥ネギ入りによって画期的な醤油味を実現しヒットさせた「サッポロ一番しょうゆラーメン」 (1966年発売)である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
まもなく食品の3市場の分析が終了し、薬品の2市場についても、最低限の分析は終わりつつある。問題は、コロナ禍のためにインタビュー調査が叶わない点であり、この点をどのように補うかである。
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Strategy for Future Research Activity |
残る食品のビスケット市場、ブルボンの事例を完了させる。その上で、医薬品の2市場の事例研究う深めていくが、具体的には、抗炎症剤の田辺製薬(田辺三菱製薬)、鎮咳去痰剤の帝人医薬品それぞれの事例について、さらなる分析を加えていきたい。
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