2023 Fiscal Year Annual Research Report
Serendipity and Innovation Management
Project/Area Number |
19K01845
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Research Institution | Seijo University |
Principal Investigator |
積田 淳史 成城大学, 社会イノベーション学部, 准教授 (10635676)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | イノベーションマネジメント / クリエイティビティ / 偶然 / 幸運 / セレンディピティ / テキスト分析 |
Outline of Annual Research Achievements |
【最終年度の活動】最終年度は、過去の研究調査に基づき、学会発表・論文執筆を行うと共に、それらでのフィードバックを踏まえて追加で分析を行った。
【研究期間全体の成果概要】研究期間終了時点で、学会報告2回、論文1編の成果を得た。また、研究期間内に完了まで至らなかったが、学会報告2回が採択されており、2編の論文が投稿中である。
【研究の具体的内容】 本研究の目的は、イノベーションマネジメントにおいて「偶然(幸運、セレンディピティ)」が果たす役割を明らかにすることであった。当初はテキスト分析とケーススタディを組み合わせた研究手法を計画していたが、テキスト分析を続けるうちに多くのことがわかり、あるいは、わからないことが明らかになった。結果、テキスト分析の量を当初の倍以上に増やし、研究を遂行した。テキスト分析の結果、明らかとなったのは、「関係者らが意図しなかった偶然の事象が大きな役割を果たしている」ことが、普遍的な現象であることである。イノベーションマネジメント関連のケーススタディでは、平均して2件以上の偶然の事象が成功に貢献していた。一方、経営に関わるあらゆるケーススタディで偶然が成功に貢献しているとはいえず、例えば、特に経営危機時の組織変革では偶然のできごとはほとんど成功に貢献していなかった。この結果は、マネジメントの置かれたシチュエーションやゴールによって、偶然をどう包含すべきか、その望ましい形が変わることが示唆される。成功に貢献した偶然がどう生じたかについては、関与者たちの個人的なネットワークからもたらされることが多かった。個人的な社内外の人間関係が、意図せざる知識や経営資源を関係者らにもたらし、それがブレークスルーを導いていた。この結果は、弱い紐帯などの伝統的な理論と整合的であり、偶然という概念が経営学の諸理論と整合的であることが示唆された。
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