2020 Fiscal Year Research-status Report
イノベーションの事業化における企業内経営者人材の役割
Project/Area Number |
19K01858
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Research Institution | Hitotsubashi University |
Principal Investigator |
島本 実 一橋大学, 大学院経営管理研究科, 教授 (20319180)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | イノベーション / 研究開発 / 技術政策 / 経営学 / 経営環境 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、日本企業が将来にわたって、新規事業を開発していく際に必要な条件を明らかにしようとするものである。近年、日本企業においては、技術的には優位性がある場合でも、それを持続的なビジネスにまで成長させることができず、それが利益の獲得につながらないという現象が見られる。 実際に医療用ワクチン等の先端分野では先進国に追いつけず、半導体や電機等では途上国と考えられていいた国の企業に追撃されるなどのことが眼前で次々と生じている。こうした状況を克服するためには、これまで同様、技術的なイノベーション能力を蓄積することに加えて、それを有効なビジネスにするために必要なスキルを備えた人材(経営者人材)が必要である。本研究は、日本企業がどうすればそういった社内経営者人材を育てることができるのかについて、歴史的な事例研究を通じて明らかにするものである。 令和2年度は、コロナウィルスに伴う社会的活動の制限によって、予定されていた研究がほどんど停滞するという予期せぬ事態が生じた。そのため令和2年度は予定を変更し、これまで進めてきた再生可能エネルギー領域における企業内人材の研究を、英語で世界に向けて発信をすることに精力を集中した。再生可能エネルギーをめぐっては、京セラやシャープ、パナソニック等の企業において、太陽光発電など自然エネルギーを新たな事業にするために社内で企業家的役割を果たした人々が存在した。彼らの行動と企業の戦略、政府の政策の関係に関する研究蓄積をコロナ禍の自宅待機の状況を活かして、英語の書物にして刊行することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和2年度の研究計画は大きな変更を余儀なくされ、また学会発表も軒並み中止となり、国内・国外の学会発表の機会を失うこととなった。しかしながら、コロナ禍による自宅待機の時間を用いて、これまでの研究をまとめ、英書を刊行することができたのは大きな収穫であった。 令和2年度も後半になると学会大会や部会がオンラインで復活したので、組織学会、経営史学会の部会・研究会でのコメント担当者に招かれた他、企業家研究フォーラム冬期部会大会では、本研究で進めてきた住友化学のSDGsと社内企業家の事例の発表を行うことができた。 令和3年度は令和2年度に延期となった学会大会が再開されるなど事態の好転の兆しは見られるが、研究や学会報告などが以前のように全面的に回復するまでにはまだしばし時間がかかるため、引き続き研究計画の弾力的な変更が必要となる。
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Strategy for Future Research Activity |
令和2年度については、以上のように研究計画の大きな変更を余儀なくされた。この先についても、コロナ禍の状況が収束しない限りは、企業や業界団体を対象に、対象者に対面で行う聞き取り調査には引き続き大きな制約が課されることは確実である。そのため、この企業内経営者人材の研究についても、できるかぎり対面を避け、組織内の議事録等の資料を用いて、研究を進めていくことが避けられない。 そこで令和3年度については、化学系の業界団体の資料を用いて、研究の領域を絞り、化学産業を対象に、日本の化学企業における研究開発と新事業開発の方向性、および政府のイノベーション政策との関係、さらには大学の研究者の協力のプロセスを明らかにすることを計画している。産官学連携の実態について研究を深めることで、イノベーションを事業化につなげる企業内経営人材の機能が明らかにされる。
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