2020 Fiscal Year Research-status Report
組織間の相互依存性が資源蓄積と成果ならびに対処戦略に与える影響の分析
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19K01862
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
中本 龍市 九州大学, 経済学研究院, 准教授 (80616136)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 経営学 / 組織論 / 資源依存理論 / 組織間関係論 / 専門職サービス組織 / 特許 / 知識 |
Outline of Annual Research Achievements |
第二年度では、必要なデータセットを構築し追加的にデータを補い分析を行った。 組織間の埋め込みが組織成果に与える影響を明らかにすることができた。既存研究が明らかにしているように、専門サービスの取引では、顧客は成果物を評価しにくく、また、サービス提供者は、顧客のニーズを理解するために時間がかかる(Sharma, 1997) 。このため、埋め込みを形成する二者間の継続的・長期的取引が信頼関係を醸成し、情報交換の質や頻度を高め、行動の予測可能性を高めるため望ましいと考えられる。ただし、二者間の継続的・長期的取引にはリスクや潜在的な負の効果もある(Adler and Kwon, 2002; Uzzi, 1997)。さらに、二者関係の集合として、顧客の集合(ポートフォリオ)を考えると埋め込みが同じ効果をもたらすとは想定できない。構造的に複数の顧客関係に埋め込まれることによって、事務所は新規の情報や資源に触れることが制限される(Burt, 2004; Uzzi, 1996)。本研究では、次の仮説を検証した。 仮説(1)埋め込みは組織成果と負の関係にある、仮説(2)専門職の転職は、「埋め込みと組織成果の負の関係」を弱める、仮説(3)受任内容の分散は、「埋め込みと組織成果の負の関係」を弱める、仮説(4)技術範囲の広さは、「埋め込みと組織成果の負の関係」を弱める
分析の結果、仮説(1)、(2)、(3)が支持された。埋め込みは負の効果を持つが、それは、専門職の転職(Chondrakis and Sako, 2020)と受任内容の分散(Mawdsley and Somaya, 2020)によって緩和できることが明らかになった。これらの結果は、この分野の先行研究では、Mawdsley and Somaya(2020)を一部支持するものであるが、単なる追試研究に止まらない。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
感染症拡大により、当初の予定よりも遅れている。 第一に、研究補助に必要な大学院生の確保とデータ処理作業が制限されたことが挙げられる。部分的にマスキングが必要なデータを用いるため、在宅勤務などで研究室外に持ち出すことができないデータを用いているためである。 第二に、質的および量的データの収集に必要な出張が制限されているためである。
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Strategy for Future Research Activity |
質的および量的データについて、代替的なデータの収集をし、データセットの構築を行っている。できる限り補助事業期間内での完成と成果報告を目指すが、難しい場合には補助事業期間延長申請を検討する。
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Causes of Carryover |
感染状況の悪化から出張等を取りやめることになったため。 感染状況が改善されない見通しであるから、次年度請求分のデータセットの購入費に含めて使用する計画である。
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