2021 Fiscal Year Research-status Report
中小企業の対外直接投資に関する日中比較:企業のネットワーク戦略と支援体制を中心に
Project/Area Number |
19K01878
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Research Institution | Kyoto Women's University |
Principal Investigator |
姜 紅祥 京都女子大学, 国際交流センター, 助教 (80626713)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
辻田 素子 龍谷大学, 経済学部, 教授 (40350920)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 対外直接投資 / 中小企業 / 日中比較 / 支援組織 / 華僑・華人 / ネットワーク / コミュニティー・キャピタル / 海外進出 |
Outline of Annual Research Achievements |
令和3年度では、本研究課題に関連する研究業績は、学会での口頭発表が1回、公刊された研究論文が1本である。 上記の学会発表は、2021年6月19日、アジア共生学会の2021年度第1回研究大会において「ベトナム進出中小企業における現地経営の日中比較」というテーマで実施されたものである。内容としては、ベトナムに進出している日本と中国の中小企業における現地経営の状況について比較したものを発表した。COVID-19感染拡大の影響を受けて海外での現地調査ができないため、この研究発表は2019年9月に実施したベトナムに対するフィールド調査に基づいたものである。この学会発表と研究者のコメントに基づいて、2022年3月に『アジア共生学会年報』第18号に「ベトナム進出中小企業における現地経営の日中比較」というタイトルの研究論文を公刊した。論文では、日本と中国の中小企業における対外直接投資に関する既存研究を整理し、両国の対ベトナム投資の特徴をまとめた。また、中小企業9社に対する取材に基づき、日中中小企業のベトナム投資における共通の目的として、安価な生産要素、比較的に整備されたインフラ基盤、ベトナムの優遇政策を利用することが共通の投資要因であると主張した。しかしながら、日本企業は幅広い企業間ネットワークを形成しておらず、中国企業はベトナムの老華僑とその華僑組織を使って現地経営問題の解決につながっていない、という課題が存在すると思われる。 上記の研究発表と研究論文の公開は当初研究計画の一環であり、中小企業の海外進出に大いに関心する研究者と企業者が集まるアジア共生学会で研究発表を行うことは、研究成果の社会還元にふさわしい行動だと考えている。ほかに、COVID-19感染の影響を受けて海外での現地調査が実施できない状況の中で最大限に研究目的を達成するため、2か月毎に研究会の開催と国内調査の実施を行ってきた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
令和元年(2019年)末から世界中に拡大されてきた新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は、本研究に大きな影響を与えてきた。本研究は、2019年夏に予定通りのベトナム調査を実施し、現地視察と現地経営者への聞き取り調査を根幹とする研究方法をとってきた。しかし、数か月後からCOVID-19の影響で世界各国は人員の移動を厳しく制限し、当初予定したベトナム、タイ、ラオス、イタリアなどのフィールド調査が実施できなくなった。COVID-19の影響は思わず2020年度と2021年度にも続いており、日本国内にも4回の非常事態宣言とまん延防止措置が発し、国内での移動と調査にも大きな壁となるため、本研究課題の進行は大幅に遅れ、やむを得ず延期することにした。
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Strategy for Future Research Activity |
前述したようにCOVID-19の世界的な感染拡大により、本研究の進行は大幅に遅れている。2020年度では研究代表者と研究分担者による不定期で研究会の実施、2021年度では2か月ごとに研究会の定期実施に加えて兵庫県庁訪問と兵庫県企業への取材とオンラインでの学会発表を実施するなど、コロナ禍の下でできる限りの対応策を実施してきた。2022年度では、COVID-19ワクチンの接種により、国内では比較的に自由に移動することができ、企業訪問と視察ができる状況にあり、東南アジアなどの海外では入国制限が緩和されることが見込まれつつある。したがって、今後の研究はCOVID-19の進行状況を見極めながら、以下の推進方策を取りたい。 第一に、比較的に進行しやすい国内調査を確実に実施することである。計画としては、研究の代表者と分担者の勤務先である京都市から距離的に近く、水関連の中小企業が海外進出を多く果たしている滋賀県を中心に調査する。滋賀県庁を中心とする行政支援の内訳と政策効果、滋賀県内の水処理関連中小企業を中心とする海外投資の詳細と投資理由と投資効果、海外事業の状況と企業間連携の実態、などの研究課題を明らかにしたい。 第二に、諸外国の水際対策を分析しながら、できる限り早く海外フィールド調査を再開することである。2022年5月時点では、東南アジア諸国が入国制限を緩和することが報道されたため、2022年度はタイに対するフィールドワークを実施する可能性が浮かび上がっている。したがって、調査先の状況を見極めながら早めに調査計画を策定し、現地調査の早期実施を推進する。また、イタリアなどのヨーロッパを調査することも今後に予定しているため、研究メンバーと緊密に連携し、情報を交換しながら海外でのフィールドワークを推進していきたい。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由は以下である。第一に、国内での研究調査を実施する際に経費が生じるためである。調査先は、研究グループの拠点である京都市から近い兵庫県内と滋賀県内だと想定するが、遠距離になる可能性も否定できず、調査の状況によって宿泊費が生じる可能性がある。第二に、海外フィールド調査を実施する際に経費が生じるためである。航空運賃の金額に左右されることがあるが、比較的に高額な交通費と宿泊費が生じると想定する。第三に、国内の研究会や学会参加に伴う経費が生じるためである。第四に、研究を遂行するための書籍や消耗品が必要となるため、経費が生じる。
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