2023 Fiscal Year Research-status Report
中小企業の対外直接投資に関する日中比較:企業のネットワーク戦略と支援体制を中心に
Project/Area Number |
19K01878
|
Research Institution | Kyoto Women's University |
Principal Investigator |
姜 紅祥 京都女子大学, 国際交流センター, 講師 (80626713)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
辻田 素子 龍谷大学, 経済学部, 教授 (40350920)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2025-03-31
|
Keywords | 対外直接投資 / 中小企業 / 日中比較 / 支援組織 / 取引構造 / ネットワーク / コミュニティー・キャピタル / 海外進出 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、日本と中国の中小企業の対外直接投資を対象として、その投資戦略や支援策の諸事例を比較分析し、中小企業が直面する様々な課題がどのように克服されているか、成功裡に海外進出を果たす中小企業はどのような外部資源をいかに活用しているか、そしていかに現地で競争優位を獲得するか、を実証的に解明することを目的とする。 2019年度以降、ベトナムに対するフィールド調査を実施し、日本と中国のベトナム進出企業を調査した。その後の2020年度と2021年度では、コロナ禍の下で研究方法を文献調査に切り替えて研究し続けてきた。2022年度では、国内でのフィールド調査を再開し、滋賀県を中心とした中小企業の海外進出を対象に、対アジア直接投資における行政支援と企業戦略、取引ネットワークと競争状況を調査した。2023年度では、滋賀県中小企業を継続的に調査しながら業界団体に対する訪問調査、中国に進出した滋賀県中小企業に対するフィールド調査を実施した。 2023年度の滋賀県中小企業調査については、まず、バルブ産業を研究対象として滋賀バルブ協同組合を訪問し、滋賀県バブル産業の歴史と海外進出企業の内訳、現地経営と業界団体のサポート状況を調査した。次に、年度末には中国でのフィールドワークを実施し、吉林省において中国バルブ産業の歴史推移と技術進歩、日本企業の誘致策と技術・市場競争の影響に関する情報収集を実施した。また、遼寧省大連市において現地進出滋賀県中小企業の現地経営と取引ネットワークに関する調査を実施し、日系企業と中国系取引企業を視察した、さらに、滋賀中小企業の新規中国進出を参与観察し、山東省滕州市進出を計画する企業経営者と同行して現地政府と中国企業とのビジネス交渉を考察した。 研究実績としては、書籍1冊、学術論文3本、学会発表4回を公表した。2024年度に引き続き論文の執筆と成果公表を計画している。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
2019年末から世界中に蔓延した新型コロナウイルスが本研究に与える影響は深刻である。すなわち、本研究の研究課題を解明するため、海外でのフィールド調査を実施し、実証研究のための必要な一次データを収集することが必須である。しかしながら、海外でのフィールドワークは2年間にわたり中断せざるを得なかった。調査できる状況が整えたのは、2023年4月以降である。 とはいえ、2023年度にもコロナ禍の影響が完全に消えたものではなく、世界情勢の変化も新たに生じている。そのため、海外渡航の制限が少なからず残っており、調査先の調整と調査企業の確保に困難さが増している。例えば、2024年3月に実施した中国に対する現地調査では、研究分担者が渡航のための査証を申請しなければならず、現地移動や企業に対する訪問予約なども従来と比べて複雑になっている。ほかの国・地域にも似たような障壁が存在し、当初予期していない事情が生じた。このため、本研究の進捗が当初の計画より遅れている。
|
Strategy for Future Research Activity |
すでに述べたように、本研究はコロナ禍と世界情勢の変化の影響を受け、当初の計画より遅れた状況に置かれている。その対策としては、文献研究、研究会の定期開催、日本国内でのフィールド調査の実施などで対応してきた。2024年度は、本研究の最終年度として、以下の方策で研究を推進したい。 第一に、当初計画した海外フィールド調査を積極的に実施し、研究成果をあげるために努める。具体的には、タイの羅勇工業団地とベトナム・ハノイ市の日系企業・中国系企業向け工業団地に対するフィールド調査を2023年内に実施する。年度末の2025年2月と3月に、イタリアでのフィールド調査を実施する。この海外調査を確かに遂行するために、早い時期に具体的な調査地と調査企業を決定・調整する。 第二に、引き続き滋賀県中小企業に対する調査を実施し、特に水関連の中小企業に対して深く分析し、研究成果のまとめと公開に努める。 第三に、研究分担者と緊密に連携し、2か月一度の定期研究会を開催する。これにより、研究と調査の情報を共有し、研究計画を的確に遂行する。
|
Causes of Carryover |
2024年度では国内外でのフィールドワークなどが実施可能な状況にあり、本研究は計画に基づき、以下の理由と使用計画の下で次年度使用額が生じる。 第一に、国内での企業調査を実施する際に経費が生じるためである。主に滋賀県だと予定しているが、研究メンバーの本拠地である京都市と神戸市から地理的に近いため、経費は主に交通費となる。効率性が最も高いと判断される場合は宿泊費も生じる可能性がある。第二に、海外フィールド調査を実施する際に経費が生じるためである。東南アジアのタイとベトナム、ヨーロッパのイタリアへの現地調査を計画するため、比較的に高額な交通費と宿泊費が生じると想定している。第三に、国内の研究会と学会での研究成果発表に交通費、研究を遂行するための文献と消耗品の物品購入費が生じる。
|