2019 Fiscal Year Research-status Report
職場チームの課題特性と風土がチームの失敗学習に及ぼす影響
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19K01881
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Research Institution | Fukuoka Jo Gakuin University |
Principal Investigator |
藤村 まこと 福岡女学院大学, 人間関係学部, 准教授 (10404039)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
三沢 良 岡山大学, 教育学研究科, 准教授 (90570820)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | チーム学習 / 失敗学習 / 成功学習 / チーム風土 / 課題特性 / 振り返り / リフレクション |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,産業組織におけるチーム学習の促進要因を明らかにするため,チームの風土,チームの課題特性,そしてチームや個人による振り返り(reflection)の影響を検討する。初年度は以下のような研究を行い学会報告を行った。 第一に,民間企業や公的機関で働く個人を対象とした質問紙調査にて組織やチームの心理的安全(Psychological Safety)の影響を検討した。分析の結果,組織やチーム内で他者に異を唱えたり自由に発言するなどの対人的リスクを取ったとしても安全であるという知覚,つまり心理的安全が高いことは組織への“あきらめ”や“怖れ”を低減させてメンバーの発言を促進することが示された。 第二に,失敗や成功の振り返りに及ぼす暗黙の知能観の影響を検討した。暗黙の知能観(Dweck,1999)とは,知能や能力は可変的であると考える増大的知能観,知能や能力は可変的でないと考える固定的知能観のことだが,大学生を対象とした質問紙調査の結果,チームや自身に関する知能観の内容によって,学習効果を高める失敗と成功の振り返りのスタイルが異なることが分かった。 以上のような実証研究に加えて,本研究では「チームによる失敗学習の生起過程の理論的整理」も行っている。文献研究に基づいてチームの失敗学習の理論的モデルの構築を行うため,本研究の重要概念となる「失敗学習」,「チームの風土」,「信頼」,「学習志向性」,「課題特性」などの先行研究の収集とレビューを実施している。今後の本調査に向けて,概念定義の明確化,測定尺度の収集と整理,そして,理論的枠組みの精緻化を進める予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
チームの失敗学習の規定要因を明らかにするため,暗黙の知能観やチームの風土に関する基礎的なデータを得て,その分析結果を学会等で報告した。先行研究の収集やレビューも比較的順調に進んでいる。本研究で意図する理論的枠組みを網羅した調査や実験の実施には現時点では到達できていないが,共同研究者との連携も順調であり次年度に実現可能と予測される。以上のことから,本研究の進捗はおおむね順調であると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
実施を予定しているのは,①チームの風土が失敗学習に及ぼす影響の検証,ならびに②チームの課題特性による調整効果の検証である。企業での質問紙調査を用いてデータの収集と分析を行う予定であるが,事前に現地を訪れ,観察調査やインタビュー調査を行うことを予定している。しかしながら,COVID-19の影響を考慮し,状況に応じてオンラインミーティングやウェブ調査を用いた調査へ切り替えることを想定している。
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Causes of Carryover |
COVID-19の影響もあり,1月から3月に実施予定であった企業での観察調査やインタビュー調査を次年度に延期したため,予算も次年度へ繰り越すこととした。次年度は協力者である企業や団体との連携の上,調査の実施内容を検討するが,必要に応じてウェブを用いた調査の実施に切り替えを行う。次年度予算は,これらの調査実施に関連する費用,分析用ソフトウェアの購入,その他の必要な物品の購入などに使用予定である。
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