2019 Fiscal Year Research-status Report
フランチャイズ組織における「意図せざる結果」の探求
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19K01896
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Research Institution | Chuo University |
Principal Investigator |
犬飼 知徳 中央大学, 戦略経営研究科, 教授 (60380143)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | フランチャイズ組織 / 意図せざる結果 / レントシーキング |
Outline of Annual Research Achievements |
本申請研究の目的は,フランチャイズ・システムを導入している組織(以下,フランチャイズ組織)内における協調と競争のダイナミックなメカニズムを解明することにある.具体的には,ミクロレベルでは合理的に行為しているフランチャイジーの相互作用が時間経過に伴って変化していき,最終的にマクロレベルではフランチャイズ組織全体にとって「意図せざる結果」が生じてしまうメカニズムを説明することを試みる. フランチャイズ組織は,フランチャイザーとフランチャイジーという独立した二種類の事業者が契約関係に基づき協調しながら事業を進める組織である.しかしながら,必ずしも常に協調が維持されるわけではなく,時に両者が利益配分を巡って競争するレント・シーキングと呼ばれる活動が観察される.このレント・シーキングは,そのフランチャイズ組織が持つ本来のビジネスモデルを歪め,機能不全に陥らせることもある一方,大きくビジネスモデルを転換する契機にもなりうる.この研究は既存研究に欠けていた組織内における協調と競争の二側面からアプローチにより,よりフランチャイズ組織において現実に生じている現象を説明できるようになるだけでなく,実際のフランチャイズ経営に対して多くの具体的な示唆をもたらすものである. 2019年度は,美容室フランチャイズ組織の協力を得て聞き取り調査を中心に知見を得る計画であったが,複数の自動車メーカーとディーラーのフランチャイズ組織について調査をできる機会に恵まれたため,そちらを優先して研究を進めた.その結果,非常に興味深い聞き取りデータを得ることができたため,この知見に基づいて論文を執筆している.この調査によって全体の研究計画は多少の変更をせざるを得なくなったがより包括的かつ一般性の高まった理論構築が可能になったと考えている.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2019年度は,自動車ディーラーのフランチャイズ 組織に関する研究を実施する機会に恵まれたので,そちらを優先的に進めた結果,多くの有益なデータを得られた.また,それらの調査に基づいて理論構築の作業も比較的順調に推移している.ただし,当初計画していた研究計画を後回しにしたため,その調査計画を2020年度は進めつつ,全体として整合性の取れた最終アウトプットを目指していきたいと考えている.さらに,コンビニエンスストアのフランチャイズ 組織については,こちらも研究を進める調整ができたので,ディーラーと,美容室,コンビニエンスストアの3つの同時並行的に調査を進めていこうと考えている.
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Strategy for Future Research Activity |
2019年度の研究成果は,中間報告として一本の論文にまとめて発表したいと考えている.その成果をもとに理論構築作業を進め,さらに事例部分にあたる美容室やコンビニエンスストアの調査を2020年度以降は進めた上で,来年度には理論検証の意味も含めた質問紙調査も実施したいと考えている.
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Causes of Carryover |
2019年度の調査は,当初計画では国内の美容室フランチャイズ組織を対象に実施予定であったが,急遽自動車ディーラーのフランチャイズ組織の研究が可能になったため,研究計画を一部修正して実施した.その際に,計画として計上していた費目と合わない部分があったため,自動車フランチャイズの調査研究は他の研究資金を使用したため,差額として次年度使用額が発生した.
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