2020 Fiscal Year Research-status Report
株主価値を最大化するペイアウト政策選択モデルの構築
Project/Area Number |
19K01901
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
野瀬 義明 同志社大学, ビジネス研究科, 准教授 (80633966)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | ペイアウト / 株主優待 / 株価急落リスク / price-runup |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度はペイアウトの1種である株主優待の機能に関する分析を行った。昨年来のコロナ危機において、多くの上場企業の株価が急落をみせるなか、一部の銘柄が底堅い値動きを見せた。研究代表者らは株主優待を行っている企業で株価が底堅い可能性を見いだし、実証研究を行った。具体的には、2008年の世界金融危機(リーマンショック)、2011年の東日本大震災、2020年のコロナウイルスショックを、資本市場の危機と位置づけ、危機の間の株式リターンを株主優待実施企業、非実施企業に分けて統計学的に分析した。 その結果、株主優待実施企業では危機時に株価の下支え効果があると判明した。研究の成果は、2020年9月に行われた証券経済学会にて発表し、その後論文を2020年発刊の証券経済学会年報にて公表した。 加えて、株主優待を行っている企業において、権利付き最終日に向けて株価が上昇する傾向を発見し、関連する先行研究に依拠し、price -runup 効果と命名した。price -runup 効果が生じる要因についても分析を行い、第一に株主優待がその企業が投資家に対するvisibilityを高めることにより、price -runup効果が発現することを明らかにした。加えて、個人投資家が株価変動リスクを抑えつつ株主優待を得るために行う「クロス取引」もprice -runup効果を引き起こすことを実証した。これら成果は国際ジャーナルに投稿して査読を受けているところである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
年間1本以上の論文公表を目標としている。計画に記載したペイアウト分析のwebサービスは今年度に開始させるべく準備中である。
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Strategy for Future Research Activity |
これまで株主優待を重点的に研究してきたが、今年度は配当、自社株買いを組み合わせた分析に取り組む予定である。計画に記載したペイアウト分析のwebサービスは今年度に開始させるべく準備中である。
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Causes of Carryover |
理由は、コロナ問題により研究出張が大きく制限されたためである。 繰り越した金額は、主に英文校正費に充てさせていただく計画である。当初の見込みでは、研究成果は主に国内のジャーナルにて発表することを想定していたが、現在は、海外のジャーナルへと発表の比重を移している。このため英文校正費がより多額になると見込まれるためである。
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