2022 Fiscal Year Annual Research Report
株主価値を最大化するペイアウト政策選択モデルの構築
Project/Area Number |
19K01901
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
野瀬 義明 同志社大学, ビジネス研究科, 教授 (80633966)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | ペイアウト / 株主優待 / 株主ベース |
Outline of Annual Research Achievements |
ペイアウトのうち株主優待に注目し研究を継続してきた。最終年度は株主優待の長期優遇制度を導入する企業にフォーカスを当てた分析を行った。株主優待の長期優遇制度は、すでに株主優待を行っている企業が、個人株主をさらに増加させるとともに、長期安定株主となってもらうことを意図したペイアウト施策である。株主優待制度の導入には、正の株式効果があると判明している。そのメカニズムとして、株主数(株主ベース)が増加することで資本コストが下がるためと解釈されている。しかし、長期株主優待に関しては、実施企業自身は個人株主のさらなる増加を企図しているが、実際に目的を果たしているか否かは明らかでなかった。長期固定株主の増加が株式流動性を下げることで資本コストは上がると主張する先行研究もみられた。 本年度の研究では、①長期株主優遇制度の導入のアナウンスメント効果を測定、②導入企業の個人株主数の変化を測定、③導入企業の株式流動性の変化を測定した。分析の結果、長期株主優遇制度の導入は正の株価効果を持つこと、株価効果は導入後の個人株主の増加(株主ベースの拡大)で説明がつくこと、導入後に株式流動性は低下しないこと、が明らかとなった。長期株主優遇制度は先行研究が危惧する株式流動性悪化にはつながらず、株主ベース拡大というポジティブな効果のみを期待しうることを示すことができた。研究成果は査読付き論文に投稿中である。 研究期間全体でも、成果がより見込める株主優待にフォーカスした研究を行ってきた。2020年のコロナ危機をきっかけに行った分析では、株主優待には危機時の株価の下支え効果があることを示せた。加えて、本年度の研究で株主優待が継続的に株主ベース拡大に寄与することを明らかにし、株主優待が他のペイアウト施策とは異なる特徴を持つことを示すことができた。
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