2019 Fiscal Year Research-status Report
Study on organizations enhancing creativity through data analysis of behavior and emotion in workplaces
Project/Area Number |
19K01910
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
稲水 伸行 東京大学, 大学院経済学研究科(経済学部), 准教授 (50572830)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | 経営学 / 組織行動論 / クリエイティビティ / シミュレーション / ビッグデータ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、「組織風土・感情・行動(コミュニケーション)がどのようにクリエイティビティと連関するのか」を明らかにすることである 。日本企業においてクリエイティビティを高めることは喫緊の課題である。欧米では、持続的な特性である組織風土から、日々刻一刻と変動する感情や行動との関係が探求されるようになってきている。しかし、組織風土・感情・行動の3つを同時に計測しながらクリエイティビティを促す組織に迫った研究に至っていない。こうした研究には、組織の「マイクロ」な「ビッグ」データを複数の側面から時系列で取得し解析する必要があるのだが、これを実現するためのハードルはかなり高い。さらに、こうして得られた解析結果をもとに実務的にも耐えうるようなモデル化には至っていない。この課題に取り組むのが本研究である。 本研究の初年度となる2019年度には、大規模な質問紙調査による予備的分析を行ったほか、特定の組織を対象とした実験的調査も行った。実験的調査では、質問紙調査に加えて、動画撮影やセンシング技術を用いた行動調査も行った。このような先端的な手法の組み合わせによるクリエイティビティ研究は未だに蓄積が少ないため探索的な研究にならざるを得ないが、これら一連の調査により、仮説構築および研究手法もある程度確立することができた。具体的には、仕事内容に合わせて場所を選んで働くことができるActivity-based Workingと呼ばれる働き方や行動が、職場内のコミュニケーション・ネットワークを効果的なものに変化させ、クリエイティビティを高めるということが示唆された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
組織風土と感情、行動に関する「マイクロ」な「ビッグ」データを取得するには、調査先企業の協力が欠かせず、この点が本研究を推進する上で大きなハードルと考えられていた。この点に関して、企業2社との共同研究を推進する中で、調査先を確保する見通しが立った。一つの企業からは動画撮影のデータおよび組織風土に関する質問紙調査のデータを提供してもらうことになり、解析を進めている。またもう一方の企業からも、2019年秋から2020年2月にかけて、動画撮影およびセンシング技術を用いた行動データ、組織風土に関する質問紙調査のデータを提供いただき、同様に解析を進めている。これらのデータを十分に解析することで、本研究テーマについて一定の成果を上げられるものと考えている。
|
Strategy for Future Research Activity |
2019年度に得られたデータの解析を引き続き行う予定である。また、これらのデータ解析で習得した解析方法を用い、合わせて得られた仮説について、新たなデータを取得し解析を行うことを考えている。特に、2019年度に得られたデータは組織風土と行動に関するデータであり、もう一つの柱である感情に関するデータは得られていない。そのため、日誌法などの手法を用いた調査に協力いただける企業を開拓することが必要と考えている。 また、ある程度蓄積されたデータをもとに、シミュレーションによる実験的試行を繰り返すことで、仮説構築・検証を補完できる可能性が高い。シミュレーションによるモデル化も検討することで、組織風土、感情、行動とクリエイティビティの関係性を明らかにしていく。
|
Causes of Carryover |
当初、申請者の側で調査票作成と実施、行動データ取得のための各種機材の準備・実施およびデータ整理をする予定でいたが、調査協力企業よりデータ提供を頂く形で研究を進めることができたため、予想外に使用額が少なくて済むこととなった。探索的研究の段階においては、提供データであっても十分な分析ができるものと考えられた。2020年度においては、2019年度の分析によって得られた知見をもとに規模を拡大して調査を実施する予定であり、その際に合わせて研究資金を使用することを考えている。
|
-
-
-
[Book] 経営組織2019
Author(s)
安藤史江, 稲水伸行, 西脇暢子, 山岡徹
Total Pages
248
Publisher
中央経済社
ISBN
978-4502326615