2022 Fiscal Year Research-status Report
説明責任を通じた正統性獲得行動の罠:現代における「鉄の檻」の解明
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19K01916
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Research Institution | Toyo University |
Principal Investigator |
中西 善信 東洋大学, 経営学部, 准教授 (30755905)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 正統性 / 説明責任 / 公組織 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,組織が,正統性を獲得しようとして,かえって新たな問題を生じさせるような行動を取ってしまうに至るメカニズムの解明を目的とする。特に,「説明責任(アカウンタビリティ)」を果たすことを通じた正統性獲得に着目する。研究遂行の結果,令和4年度は,国際学術誌に投稿した論文3本が掲載されるに至った。 その第1(Japan and the world economy誌掲載)は,本研究のフィールドとなる公共調達に関して,その現状把握を目指すものである。すなわち,行政機関が正統性獲得のために一般競争入札導入を拡大した結果,1者応札等の問題が発生している事実を確認した。また,1者応札につながる要因を明らかにした。 第2(Administration and Society誌掲載)は,行政機関が正統性確保のためにアカウンタビリティを果たそうとした結果,どのような問題が生じているかを,グラウンデッドセオリーアプローチにより探索した。その結果,「手続きアカウンタビリティの過度な追求が,かえって手続き正当性を棄損する」といった問題の存在を明らかにした。 第3(The Learning Organization誌掲載)は,本研究の実証研究部分の理論的基盤を確立するためのものである。このため,正統性と組織学習の関係を,先行研究レビューを通じて検討した。その結果,正統性獲得行動の諸問題の一種として,組織学習の不全を抽出した。組織内の各アクターが正統性を獲得しようとすると,その結果,組織全体としての学習が最適でなくなるのである。 また,令和3年度までの研究成果を,令和4年8月に書籍『公共調達の組織論:正統性とアカウンタビリティの罠』として刊行した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和3年度まで,新型コロナウィルス感染拡大防止の観点(所属機関における出張に関する制限等)から,インタビュー調査実施において大きな制約を受けることになった。しかしながら,制限が徐々に緩和されるに従い,おおむね予定通りの計画にキャッチアップした。 来年度に残されたのは,これまでの検討を踏まえた追加的な分析に係る学会発表1件のみである。
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Strategy for Future Research Activity |
令和4年度後半より,これまでの検討結果を統合する形で,それらの結果の延長に位置する研究を1件行ってきた。行政機関は正統性担保のために「無謬」(間違いがないこと)を装うが,その結果いかなる問題が生じているかを,グラウンデッドセオリーアプローチにより広く探索するものである。 本研究については,追加インタビューを若干行った後,今年度中に国内学会で発表予定である。
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Causes of Carryover |
令和4年度後半より,これまでの検討結果を統合する形でその延長に位置する研究を1件行ってきた。行政機関は,正統性担保のために無謬(誤りのないこと)を装うが,その結果いかなる問題が生じているかを,グラウンデッドセオリーアプローチにより広く探索するものである。この研究は,これまでの研究結果を統合する形で議論を一歩進める研究を行うためのものである。本研究については,今年度中に国内学会で発表予定である。 このため,一部のデータ収集と,学会発表のための旅費に係る支出が次年度に繰り越しとなった。使用計画は以下のとおりである (1)インタビューデータのテープ起こしを発注する(2万円×5件 = 10万円) (2)学会発表のため,1件の国内出張を行う(予定発表先:組織学会・京都・2023年6月・6万円)
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