2023 Fiscal Year Annual Research Report
説明責任を通じた正統性獲得行動の罠:現代における「鉄の檻」の解明
Project/Area Number |
19K01916
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Research Institution | Toyo University |
Principal Investigator |
中西 善信 東洋大学, 経営学部, 教授 (30755905)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 正統性 / アカウンタビリティ / 行政機関 / 公共調達 / メディア |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,組織が,正統性を獲得しようとして,かえって新たな問題を生じさせるような行動を取ってしまうに至るメカニズムの解明を目的とした。特に,アカウンタビリティを通じた正統性獲得に着目した。 研究成果として,国際学術誌に論文4本が掲載された。第1の論文(Business Strategy and Development誌掲載)は,公共調達に関連した不祥事の発生に伴いスティグマを押された自治体が,これを解消しようとして「右に倣え」式の対応を取ることを明らかにした。第2の論文(Japan and the world economy誌掲載)は,本研究のフィールドとなる公共調達の現状把握を目指した。そして,行政機関が正統性獲得のために一般競争入札導入を拡大した結果,1者応札等の問題が発生している事実を確認した。第3の論文(Administration and Society誌掲載)は,行政機関が正統性確保のためにアカウンタビリティを果たそうとした結果生じる不具合を探索した。その結果,「手続きアカウンタビリティの過度な追求が,かえって手続き正当性を棄損する」といった不具合の存在を明らかにした。第4の論文(The Learning Organization誌掲載)は,本研究の実証研究部分の理論的基盤を確立するためのものである。正統性獲得行動の諸問題の一種として,組織学習の不全を抽出した。すなわち,組織内の各アクターが正統性を獲得しようとすると,その結果,組織学習が全体最適でなくなるのである。 上記研究成果は,書籍『公共調達の組織論:正統性とアカウンタビリティの罠』として取りまとめられ,刊行された(経営行動科学学会2022年度JAASアワード(優秀研究賞)受賞)。 また最終年度は,行政機関のアンラーニングを妨げる要素に関して学会にて報告した。
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