2019 Fiscal Year Research-status Report
組織制度と取引関係の“協力”への影響 ―成果主義・モジュール化、そして協力―
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19K01919
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Research Institution | Bunkyo University |
Principal Investigator |
幸田 達郎 文教大学, 人間科学部, 教授 (30468368)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 日本的経営 / 国際経営 / すり合わせ / モジュール化 / 年功序列 / 成果主義 / 新制度派経済学 / 産業・組織心理学 |
Outline of Annual Research Achievements |
1.概要 【議論の前提の確定】現在、製品を作成するにあたって、仕様や完成度を細かいところまで向上するために社内やグループ企業のなかで綿密にやりとりをすることが、日本企業の強さの根底にあるといわれている。しかし、グループ内の限られた人材や製造能力を活用するだけではなく、製品内に明快な接続モジュールを設定し、モジュールごとの接合点から先については、低価格・高品質なものを世界中から厳選し、最適なものをみつけ、それらを組み合わせることのほうが有効になってきているという議論がある。この背景として、ICTの発達や国際的なコミュニケーション・発展途上国の生産能力の向上などがある。これまでの日本企業の強みであった内部での細かいすり合わせよりも、モジュール化による最適な組み合わせのほうが競争力が高くなるという環境が現出した、という理解である。【焦点】しかし、どちらか一方ではなく、社内やグループ企業内での綿密なやりとりと、モジュール化による最適な組み合わせを併用したほうが、競争力が高まるはずであろう。この実務的な競争優位構築と、理論的背景の源流としての1960年頃から1980年代頃までの、いわゆる日本的経営論を再考し、新たな枠組みから基本的な日本企業独自の競争力の構築のひとつの方向が見いだせる可能性がある。【本年度の到達点】かつての日本企業論(日本文化論を含む)から、国や人特有の文化や行動およびコミュニケーション(ソフトな調整の原動力)のパターンと、高効率で精密なメカニズム(ハードな調整の原動力)に関する前提を設定した。先行研究の精査により、日本の優良企業分析のなかに、地理的な固有文化論的分析の要素と、非地理的な優良組織論的分析の要素を分離することができた。 また、アンケート調査の結果を分析する途上にある。 2.今後 より量的調査を充実させることと、今年度なし得なかった実地調査を行う予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
【理由】 申請後に発生した以下の4つの事由から2019年度に計画していた研究の遂行が妨げられることとなった。(1)学会の年次大会実行委員長として大会を運営したこと(主催校)。(2)今年度から学科教務委員になり、公認心理師に関わる新設科目の実習開始の準備作業(実習先開拓・実習人数割り当てと実施シミュレーション等)に追われたこと。(3)すでに動いている学部・大学院、双方の臨床心理実習の学生への同行・実習先訪問を担当しそのための頻回な出張に追われたこと。(4)年度最後の春休にスケジュールを整え、集中して研究に取り組むべきところ、コロナ禍により出張をはじめとする計画が実施不能になった。 【対応】 上記、(1)~(3)は2019年度固有の障害であった。(4)については社会全体の回復傾向が見込まれている。従って2020年度に今年度の遅れを取り戻したい。
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Strategy for Future Research Activity |
【残された継続課題】理論的な背景については一定の整理ができたので、精緻化・論文化を行う。アンケート調査については、現時点までのものを分析するとともに、規模を拡大して追加調査を行う。 【焦点となる今後の課題】上述の「現在までの進捗状況」に記載したとおりの状況により、実地調査ができておらず、この部分について重点的に推進する方針である。 しかし、コロナ禍の今後が分からず、国内外の移動や現場での詳細な観察・インタビューについてはその規模や可否について不透明である。 2019年度には論文等の公表が行い得なかったため、2020年度以降は積極的に研究成果の発信を行う。
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Causes of Carryover |
今年度は出張旅費として100万円強を見込んでいたが、「現在までの進捗状況」に記載した事由から、本年度は出張が一度もなし得なかった。特に、年度末(授業のない春休中)に集中的に出張を計画していたところ、コロナ禍の影響で全くそれが実現できなかった。そのために100万円弱の次年度繰り越しが生じてしまった。 最初に計画していた実地調査を計画期間の最後にもっていき、アンケート調査等を前倒しであらかじめ行い、そこから得た結果をもとに実施調査の焦点づけを行うことになる。 校務の関係から3年間の研究期間中最大限にエフォートを注ぐことができる2020年度中に、今年度計画していた出張を組み入れることを考えているが、コロナ感染の蔓延およびその影響から、現状ではどの程度可能なのかが不透明であり、現時点では、計画を流動的に立案せざるを得ない状況である。2020年度中の状況をみながら、場合によっては研究期間の1年間延長の申請を行う可能性も視野に入れている。
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