2021 Fiscal Year Research-status Report
組織制度と取引関係の“協力”への影響 ―成果主義・モジュール化、そして協力―
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19K01919
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Research Institution | Bunkyo University |
Principal Investigator |
幸田 達郎 文教大学, 人間科学部, 教授 (30468368)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 日本企業 / 日本文化 / モジュール / 擦り合わせ / 日本的経営 / 新制度派経済学および歴史制度的分析の手法 / 取引費用 / チャレンジ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の全体像は、従来の日本企業の強みとされていた「年功序列」と「擦り合わせ能力」。新たな「成果主義」と国際的な「モジュール型生産方式」、それぞれの組合せの適合を究明することであった。 昨度は、取引構造の違いが企業間の担当者レベルに何を引き起こすのかを統計的に解析した。従来の強みと思われるものに主に影響していたのはオープンな取引におけるモジュール化であった。オープンな取引であってもインテグラルな作り込みを行うことにより強みを活かし続けることが有効であることが示唆された。学会誌の査読論文1本と学内の紀要4本、および書籍1冊を上梓した。 本年度は、学内の紀要として、①人間科学研究に「突破力 ―困難な状況を乗り越える力と能力向上―」、②湘南フォーラムに「日本企業の海外進出の成功とPath Dependence ―進出先の経済段階に合わせた展開と日本的経営―」、③Origins and Future of Seniority-based and Performance-based Evaluation and Wage Systems in Japanese Companies、の3本を投稿した。 また、招待講演として④東アジア経営学会国際連合 産業部会第6回年次総会にて「心理学的側面からみた日本企業の人事制度 ―これまでとこれから―」について大会記念講演を行った。 特に本年度は、根底に横たわる、他人を動かすための力をインタビューの成果から分析した(上の①)。さらに、年功序列と擦り合わせ的な業務を分析するために、歴史的構造を分析した(上の②)。また、日本企業でその構造を活かしながらも環境変化に応じてモジュール的な要素を取り入れてきている動きについて分析した(上の③及び④)。コロナ禍の下で、現場視察が不可能ななか、これら定性的な分析を行い、研究の土台部分についてさらなる充実を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
コロナ禍により、現地調査、特に海外への調査が止まってしまい、これまで進捗が遅れていた。しかし、研究期間を1年間延長したことにより、期間内に所期の成果を得る目途がついた。但し、今後のコロナ禍の動向によっては軌道修正をし、心理学的手法を用いたアンケート調査に重点を置く可能性もある。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでコロナ禍によって現地調査が止まってしまっていた。そのために課題解決の根底の部分を掘り下げることとなった。それにより、新たに見えてきたこともある。 具体的には擦り合わせ型の関係とモジュラー側の関係の根底にある心理的な構えの問題である。問題解決やconflict解消にともなう心理的構えの違いである。協業を進める際に、協業相手との基本的なスタンスを①交渉と考えるのか、協力と考えるのかの違い、②状況の不確実性の高低と、擦り合わせ型の関係とモジュラー側の関係、及び心理学分野ですでに研究が進んでいる認知的単純化傾向というものとの関係、③擦り合わせ型の関係とモジュラー側の関係の違いにおける、認知的完結性欲求の高低との関係。(本来の認知的完結性欲求は、個人のパーソナリティとして扱われる問題であるが、今後、個人パーソナリティではなく、組織や職務の性質として組織行動にその概念を移転し、発展させていくことが可能であると考えられ、その応用の可能性が大きくなった。) これらの心理的概念の利用と、年功序列・成果主義といった就業環境との関連を調べるという方向が新たに拓けてきた。 従来、研究を継続しており、今後も予定していた海外への現地調査への制約条件が解除されないようであれば、上述の方向を掘り進めていきたいと考えている。また、海外の調査先としてこれまで掘り進めてきたミャンマーにおける企業での協力関係を考えていたが、現在の政治的状況及び内戦に近い状況が簡単に解決するとは考えられず、海外調査が可能であっても渡航先については多少変更が必要になると考えている。
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Causes of Carryover |
これまで計画していた現地調査がコロナ禍により全く出来ておらず、研究期間を延長し、その機会を伺っていたが、これまでコロナ禍が解決せず、海外出張が全くできなかったため、これを次年度に実施する計画である。 また、平行して(本来はその成果を取り入れて行うはずであった)大規模なアンケート調査も次年度に繰り延べた。繰り延べた大きな理由は、コロナ禍により企業での働き方が大きく変わったため、そのバイアスが大きくかかっていると考えられ、その見極めが必要であったことである。 最終年度となる次年度には、可能であれば海外への調査活動を復活させるとともに、新しい働きかたが定着したとも考えられるため、アンケート調査を実施する計画である。 現地調査は状況を見極めながら、アンケート調査は必須事項として、次年度に実施する。
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Research Products
(4 results)