2019 Fiscal Year Research-status Report
企業と国家を超えたスタンダードが生み出す多様な組織内・組織間連携
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19K01922
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
西脇 暢子 日本大学, 経済学部, 教授 (50315743)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大江 秋津 東京理科大学, 経営学部経営学科, 准教授 (90733478)
清水 剛 東京大学, 大学院総合文化研究科, 教授 (00334300)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 標準 / 組織間連携 / 組織内連携 / 知識移転 / 知識共有 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、「標準(共通の知識、技術、プロセス、プロトコルなど)」を基盤に作られる企業間ネットワークが組織マネジメントに及ぼす影響を、自動車産業を事例に明らかにすることである。本研究が着目する標準はリーン生産システムである。2019年度は研究計画に明記した①文献研究、②データ分析、③現地調査(パイロット調査)、についてそれぞれ次の実績を上げた。①については、本研究が着目する「標準」であるリーン生産システムに関する国内外の研究を渉猟し、次のことを明らかにした。先行研究では、リーン生産システムは効率化を追求した技術のシステムであるだけでなく、効率性を実現するために必要となる組織と人を含む価値のシステムである点が重視されている。したがって、リーン生産システムを軸とするネットワークでは、工場などの下位ユニットを含む組織とその構成員が技術と価値の両方を共通基盤(すなわち標準)として獲得していることが課題となる。②については、東洋経済データベースに記載された出資データ(単年度)と国別の文化的特性を表すホフステッド指標を用いて、完成車メーカーと部品メーカーの出資ネットワークを分析した。その結果、文化的距離が高いほど本国本社は海外拠点の自律性を認めていること、海外拠点の自律性は本社の収益性に正に有意な影響を与えていること、を明らかにした。現地調査はチェコの日系自動車部品メーカーの3拠点ならびに比較としてドイツ系のメーカー(機械含む)で行った。その結果、日独企業ともに、出資状況、本国本社からの社員派遣の有無、拠点創業の経緯、などの違いによって親会社のコントロールの程度が異なっていることが分かった。これらの発見はデータ分析結果とも整合的であり、今後さらに研究を進める。以上の研究成果は複数の国内学会で発表したほか、学術論文(邦文、英文)にまとめ、現在投稿中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、①文献研究、②データ分析、③現地調査を、それぞれ初年度と2年度にわたって実施し、3年目で成果を出す計画である。初年度にあたる2019年度は、①②③それぞれおおむね計画通りに行った。①はオンラインデータベースで入手可能な査読付き学術論文の他、関連する資料や書籍も含めて、幅広くレビューを行った。②はパネルデータ分析に向けた準備として単年度データを用いた分析を行い、出資ネットワークが企業収益に影響していることを示せた。③は非常に順調に進んだ。出資関係をもつ現地子会社の担当者に聞き取りを行い、本国本社のマネジメント方法が現地にどのように移転されたのか、また現地独自のマネジメント手法をもつ場合にはそれがどのように開発されたのかを聞き取った。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度も引き続き、①文献研究、②データ分析、③現地調査を行う。①は2019年度の成果をふまえて、標準と組織マネジメントの関係性について理論研究を進める。具体的には、組織観ネットワークの基盤となっているリーン生産システムの技術的知識と価値的知識の関係、それらを共有することの意味を中心に研究を進める。これらは、現場で作業員が自身およびラインの作業を「妥当」と判断するための基準であり、知識、技術、組織がセットとなったネットワークの本質を理解する上できわめて重要である。②では、複数年度のデータを用いてパネルデータ分析を行う。企業間関係を決める要素の中でも、出資関係は比較的安定度の高い要素であり、標準を通じたネットワークを把握するのに適していると考えられる。こうした特性を理解した上で、組織内・組織間ネットワークが企業収益性にどのように影響しているのか、引き続き研究を進める。③については、2019年度に引き続き、現地マネジメントと本国本社からのコントロールの関係性について詳しく調査する予定である。しかし、コロナウィルスによる海外渡航制限による影響で、計画通りに進まない可能性が懸念される。対応策として、ここまでに完了している調査資料を用いて一定の研究成果を出す、現地受け入れ先の担当者と密に連絡を取り合い、成果の内容や今後の調査の可能性などを確認する、などを予定している。
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Causes of Carryover |
海外ジャーナル投稿用の英文校正費用を次年度に回す必要が生じた。今年度での使用をとりやめ、次年度利用に切り替えたため、使用額が生じた。
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Research Products
(4 results)