2020 Fiscal Year Research-status Report
長期的・倫理的視座による日本型オーナーマネージャー経営者モデルの構築
Project/Area Number |
19K01924
|
Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
東出 浩教 早稲田大学, 商学学術院(経営管理研究科), 教授 (50308243)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
姜 理惠 北陸先端科学技術大学院大学, 先端科学技術研究科, 准教授 (90570052)
|
Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | オーナーマネジャー / アントレプレナーシップ / エフェクチュエーション / Ethical Leadership / モラル発展理論 / 経営倫理 / 認知理論 / ヒューリスティック |
Outline of Annual Research Achievements |
初年度の主たる研究成果である、(1)倫理的リーダシップ(Ethical leadership)を中心とした研究モデルを構成する主要なコンセプトの文献研究、(2)データ収集活動に向けた暫定的な研究モデルの構築、および(3)予備的なインタビュー結果から浮き彫りになった、ファミリービジネスのオーナーマネジャーにとっての長期的マネジメントプロセスをダイナミックに捉えたモデルを最終的には開発していく必要、を踏まえ本年度の研究を進める予定となっていた。 しかしながら、COVID-19の全国規模の蔓延により、対面でのインタビュー調査のスコープと件数において相当の制限がかかり、結果として、質的研究においては、一定の進捗はあったものの、予定通りの研究状況とは判断できない年度となった。 しかしながら、それを補うものとして、オーナーマネジャーの、振り返りのプロセス、起業家的な資質、認知プロセス、Heuristics(経験則)などを中心とする評価指標の開発は進み、1000件のサンプルから構成されるデータセットの構築が実現し、最終年度の分析および分析結果を踏まえた最終モデル構築への準備が整った。従い、予定とは若干異なったデータの取得とはなったが、進捗は概ね計画通りであり、より良い最終モデル開発のための基盤が構築された年と評価できる。 本年度は、引き続き、長期的かつ倫理的リーダーシップ測定のためのメジャメントを含む創造的イノベーション・マネジメントの評価スケールの作成、およびデータ収集を進め、分析結果と、可能な限りの追加の質的データを切り結ぶことにより、最終モデルの構築と発表に向け研究を進めていく。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
以下が、本年度の研究活動および成果となる。 (1)初年度の研究において、研究モデルにオーナーマネジャーの認知プロセスやheuristics(経験則)等のコンセプトを盛り込むことの価値が明確になったことを踏まえ、研究モデルの修正を繰り返しながら、最終モデルに含まれる各種の指標の開発およびデータ収集を実施した。データ・サンプルは、ファミリービジネス(FB)経営者、FB後継者、起業家を主たる分析対象とし、比較対象群として、雇われ社長、企業内新規事業リーダーおよびフォロワー、企業内新規事業未経験者を含めた1000名となる。 (2)初年度より作成を続けてきたオーナーマネジャーに率いられた長寿ファミリービジネスの家訓に関する一次データの追加収集を踏まえ、理論的サンプリングをベースに、オーナーマネジャーに率いられた長寿FB経営者を中心に、インタビュー調査および質的データ分析を、グラウンデッド・セオリーのプロセスを基本として進めてきた。ファミリーアセットそしてファミリー・ロードブロックの理論的枠組みを利用した、長寿FBの「オーナーシップ管理」と「ファミリーメンバーによる経営への参画度合」を、最終的なモデルに含めるべきとの判断に至っており、関連するケース数件をまとめ始めている。 (3) ITT(Innovation Through Tradition)、地域とファミリービジネスのナレッジスピルオーバー、そしてコロナ禍における危機認識と家訓の関わり、の3点を探索するため、11社のインタビュー調査を実施した。北陸地域におけるファミリービジネス経営者11名に対して、半構造化インタビュー調査をオンラインおよび対面にて実施。サンプリングは、業種や所在県が偏らないように創業から100年以上のファミリービジネス15社を抽出した。15 社のうち 11社が本研究への協力を受諾しインタビューに至った。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方針に関しては、以下を予定している。 (1)研究二年次に実施した質問票調査では、キャリア・バリュー、学習スタイル、ローカス・オブ・コントロール、セルフ・エフィキャシー、不確実性に対する耐性、創造性、代表性バイアス、楽観バイアス、サンクコスト・ファラシーを主にデータが収集された。本年は、信頼性・妥当性を検証した上で、それら指標を活用し、例えば、起業家的資質に溢れたFBオーナーマネージャーなど、様々なマネジャーの傾向を可視化し、抽出・評価することができるようなシステムを構成する。加えて、モラルの発展段階などの変数に関し、ストーリーをベースにした質的評価手法を確立し、追加のインタビューに使用することにより最終的なモデルへの貢献を図る。 (2)質的研究においては、これまで取り組んできた北陸地方を基にしたケースを、さらに深堀し取りまとめることを通じて、最終モデルの継続的な修正を図っていく。質的分析においては、グラウンデッド・セオリーのアプローチを主にし、axialコーディングおよびtheoreticalコーディングからの結果を中心に最終モデルへの反映を図る。また、研究結果の妥当性を高めるため、ここでの成果を反映したモデルを基に、関東圏での追加インタビューも実施する予定。 (3)これまでの2年間の成果から、倫理的オーナーマネジャーを長期的に醸成していくためには、個々人のリフレクション・プロセスを、利用しやすい形で開発していくことの必要性が浮かび上がってきている。最終年では、リフレクションに向けた自己分析ツールの開発とインタビューでの使用を通じ、オーナーマネジャーが、中期的に自己を育てていくことが可能となるプロセスの社会実装を目指す。 予定している研究成果を、各種の学会発表および、3-5件の論文および研究ノートとして、英文、和文の両方で発表・出版するための準備を進めている。
|
Causes of Carryover |
全国規模のCOVID-19の影響により、主には、予定していた、(1)海外出張旅費、(2)インタビューのための国内出張旅費、また(3)質的インタビューの数が減少したこと、により次年度使用額が生じた。 今後は、COVID-19の蔓延状況を睨みながらではあるが、夏の比較的、感染者数が少ない時期を利用して、予定している追加インタビューの実施に向けて計画を進めるとともに、昨年度取得の量的データの分析結果をフォローするための量的データの収集も視野に入れ本年度の研究を進める。
|