2019 Fiscal Year Research-status Report
製品開発段階での企業間の国際的な知識共有に関する研究:国内での知識共有との比較
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19K01927
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Research Institution | Nanzan University |
Principal Investigator |
金綱 基志 南山大学, 総合政策学部, 教授 (50298064)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 知識共有 / 製品開発 / 企業間関係 |
Outline of Annual Research Achievements |
製品を開発する際に、企業間で知識を共有しながら新製品の機能や品質を向上させることが、日本企業の強みの一つであると考えられてきた。本研究の核心の一つは、製品の開発段階において、国内において強固な紐帯を作り上げている企業が、海外のパートナーとの間にも知識共有を伴う緊密な協力関係を形成することができるのかという点を明らかにすることにある。2019年度は、こうした研究課題を明らかにするために、まず海外の最先端の研究のサーベイを行った。こうした海外の研究のサーベイによって、liability of foreignnessやliability of outsidershipが近年の研究のキーワードとなっていることが明らかとなった。 また、実証的には、造船産業を対象に行ったアンケート調査の研究発表をThe 15th Conference of IFEAMA (International Federation of East Asian Management Associations) at Kyoto(Date : 18-19 June, 2019, Place : KYOTO University)にて行った。この調査は、船舶の部品メーカーである舶用工業メーカーに対して行ったものであり、舶用工業製品の開発段階において、国内外の造船所とどの程度知識共有を行っているのか、またそうした知識共有に影響を与えている要因は何かを明らかにするものである。ここで、国内外の知識共有に影響を与える要因として取り上げたのは、課題認識の強さ、造船所との長期的な関係性、造船所との信頼関係などである。 このアンケート調査とは別に、科学技術学術論文のデータベースであるINSPECを利用して、日本企業がどの程度国内及び海外のパートナーと共同研究を行っているのかを探究するために必要となるデータを入手することに注力した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2019年度は、第一に企業間の知識共有に関する国内外の最新の研究動向の広範なサーベイを行った。このサーベイは、Academy of Management Review、Academy of Management Journal 、Journal of International Business Studiesといった国際的な学術誌を中心に行い、近年の知識共有メカニズムの中で、liability of foreignnessやliability of outsidershipが研究のキーワードとなっていることを見つけ出した。これらの研究は、国内のパートナーとの関係性の構築と海外のパートナーとの関係性の構築を比較する際に参考にすべき重要な研究と位置付けることができるものである。 第二に、実証分析として、本研究の対象とする業界の一つである造船産業を対象にした製品開発段階での企業間での知識共有の実態調査の報告を国際学会で行った。この報告は、国内のパートナーとの知識共有のレベルに影響を与える要因が、パートナーとの関係性構築の能力とパートナーとの信頼関係であること、また、海外のパートナーとの知識共有に影響を与える要因が、課題認識の強さ、パートナーとの長期的関係性、パートナーとの信頼関係、国内のパートナーとの知識共有のレベルであることを明らかにしたものである。 さらに、本研究の対象業界である自動車産業と電機産業において、どの程度国内外の企業との共同開発が実施されているのかを調査するため、INSPECを用いてデータを入手した。今後は、こうしたデータの入手を続けるとともに、そのデータを分析することにより、日本企業において国内のパートナーとの緊密な関係性が、海外のパートナーとの関係性の構築に影響を与えているのかどうかを検証していく予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
2019年度は、本研究の対象業界である自動車産業、電機産業において、どの程度国内外の企業との共同開発が実施されているのかを調査するため、INSPECを用いて国際的な科学技術学術論文における共著者のデータを入手した。 今後は、こうしたINSPECのデータの入手を続けるとともに、USPTOのデータベースを用いた特許に関するデータも入手していく。ここでは、特許申請者に記載された企業名を参照しながら、そこに海外企業か海外子会社が含まれているかどうかを調査する中で、日本企業による国際的な共同開発がどの程度の広がりを示しているのかを、自動車産業、電機産業、造船産業を比較しながら見ていくことにする。これらのデータを検証しながら、本研究の目的である、国内のパートナーとの緊密な関係性が、海外のパートナーとの関係性の構築に影響を与えているのかどうかを明らかにしていく。 また、これらのデータを5年ごとの時系列に沿って整理し、日本企業における国際的な共同開発が時系列的に見てどのように推移しているのかついても明らかにしていく。 さらに、これらの時系列的に整理したデータを分析することによって、国際的な共同開発の広がりが、産業ごとにどのように異なるのかを、自動車産業、電機産業、造船産業の3つの産業を比較する中で明らかにしていく。こうした研究の成果は、学会で報告するのと同時に、国内外の学術誌への掲載を目指していく。さらにそこでのフィードバックを踏まえてより精緻な国内外のパートナーとの共同開発に関する分析を試みていく。
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Causes of Carryover |
国内外の研究サーベイを行う際に予定していた文献が国内外の学会誌中心になったため、結果として文献収集に要する予算を節約できたことが一つの理由である。また、予定していたデータベースの利用料金が収集すべきデータ数が増加し計画よりも高額になったため、当該年度に本助成金を利用することができなかったことがもう一つの理由である。今後は、データの収集を助成金の範囲内に限定するなどの工夫を行いながら、可能な限り多くのデータを収集する形で助成金を活用していく予定である。 また、収集したデータを分析する際の補助業務については、人件費・謝金として助成金を活用していく予定である。学会での報告については、学会開催がオンラインになるのか通常通りの開催になるのかによって旅費に要する金額が異なるものになるが、オンラインでの開催になった場合には、旅費が節約できることになるため、その予算は、国際的な共同開発の指標となる科学技術学術論文データベースの利用料金に充てていく予定である。
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