2020 Fiscal Year Research-status Report
社会的イノベーションの態度・採用ギャップ解消メカニズムと国際間比較
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19K01938
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
森村 文一 神戸大学, 経営学研究科, 准教授 (80582527)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | イノベーションデザイン / 社会的イノベーション / 節約イノベーション / サービスデザイン / 購買意思決定プロセス / 態度―行動ギャップ / イノベーションへの抵抗 / サービスデザイン |
Outline of Annual Research Achievements |
この研究課題では,消費者は社会的イノベーションに対して良い態度を持っているが,実際の採用には結びつかないという「態度-採用行動ギャップ」は,イノベーションのデザインによって解消できるということを明らかにすることを目指す。 2020年度の研究計画は,次の2つを達成することであり,計画通り完了している。1つ目は,消費者のイノベーションに対する態度-採用行動ギャップに加えて,「節約イノベーション(Frugal innovation)」に関する文献調査を完了することである。これにより,基本的には,節約イノベーションが社会的イノベーションの態度-採用行動ギャップを低めるという理論モデルを構築することができた。しかしながら,潜在的な消費者たちは,節約イノベーションに対して,性能に関してより不確実性を知覚する結果,採用が妨げられる可能性があることも分かった。なお,これらの関係は,「節約性(Frugality)」によって調整されることも分かった。 2つ目は,質問紙調査の実施である。この研究全体で明らかにしたいことは,日本とドイツ,その他の国の文化の違いが,態度-採用行動ギャップと節約イノベーションの関係にどのような差異を生むのか,ということを理解することである。そこで,各国が戦略的に普及を進める社会的イノベーションとして,まずはHome Energy Management System (HEMS)とモバイル支払いシステムを選択し,2020年度は日本において,質問紙調査を実施した。なお,2019年度にもHEMSについて探索的な調査を行っている。COVID-19によって購買行動などが大きく変化したことで,HEMSの採用も大きく影響を受けたと予想できる。このような状況において,節約イノベーションが今後普及に貢献し得るかどうかについて研究することが可能となった点を副次的な成果として挙げられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実績の概要でも示した通り,2020年度の研究計画は,1)消費者の社会的イノベーションに対する態度-採用行動ギャップと,戦略的なイノベーションデザインの1つである節約イノベーションに関する文献調査を完了し,理論モデルを構築する,2)理論モデルを実証するために,日本の消費者を対象に質問紙調査を行う,という2点である。 1つ目の計画について,態度-行動ギャップと節約イノベーションに関して,イノベーション・マネジメント,製品開発,マーケティング,経営倫理など,主に研究蓄積が進む分野における文献調査が完了している。また,節約イノベーションが態度-採用行動ギャップを解消し得るし,消費者の個人特性の1つである節約性がその関係を調整するという理論モデルの構築が完了した。 2つ目の計画については,日本の消費者を対象に,ドミナントデザインと節約イノベーションデザインという2つの社会的イノベーションを対象としたシナリオベースの質問紙調査を行った。ここで得られたデータを分析し,結果をまとめ,2021年度の始めに海外ジャーナルへの投稿行う予定である。なお,2019年度の探索的調査に加えて,2020年度に行った調査で得られたデータを用いることで,COVID-19前後の社会的イノベーションに対する態度-採用行動ギャップや節約イノベーションの影響の違いを明らかにできる。これは,予期していなかった達成事項として挙げられる。なお,この研究について,R&D management conferenceという製品開発分野の国際学会に採択されている。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題は,5年間全体で5段階に分けて進める計画である。3段階目となる2021年度は,次の3つを行う計画である。 1つ目は,「コストの知覚」「パフォーマンスに対するリスクの知覚」「既存の行動パターンとの置き換えが困難であるという知覚」という社会的イノベーションの採用行動を阻害する3つの要素を,節約イノベーションデザインが解消することについて,複数の社会的イノベーションを対象に追加調査を行う。 2つ目は,イノベーションの採用行動に影響を与える文化的差異に関する文献調査,および,態度-行動ギャップ,社会的イノベーションや節約イノベーション,文化的差異に関する理論モデルの構築を行う。 3つ目は,日本とドイツにおいて質問紙調査を行う。なお,2021年度の始めに,2020年度の調査によって得られたデータの分析結果をまとめた論文を,国際ジャーナルに投稿する予定である。また,上記2021年度に得られるデータについても,年度末に,製品開発やサービス開発に高い関心を持つ学会と,国際ジャーナルに投稿する計画である。
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Causes of Carryover |
研究成果を投稿し発表する予定であった学会と,共同研究者が来日し開催する研究成果作成のための打ち合わせが,COVID-19の影響で延期となった。学会参加費や打ち合わせ開催に関わる支出が無くなったため,次年度使用額が0より大きくなった。この分は,代わりに開催される2021年度の国際学会参加費,および共同研究者と行う研究成果作成のための打ち合わせに使用する計画である。
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Research Products
(3 results)