2019 Fiscal Year Research-status Report
情報の粘着性概念を中心としたリード・ユーザーの知識移転促進要因に関する理論的研究
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19K01969
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
水野 学 日本大学, 商学部, 教授 (80411685)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
廣田 章光 近畿大学, 経営学部, 教授 (60319796)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | ユーザー・イノベーション / リード・ユーザー / ユーザー・コミュニティ / 製品開発 / 共創 / 製品イノベーション |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、リード・ユーザーのイノベーションの商業化を進めるにあたって最大の問題点となる情報の粘着性問題について、フィギュアスケートのトップアスリートによる製品開発事例をもとに、理論的再検討を行うことである。 研究初年度は、研究全体の基盤となる理論研究およびこれまで断片的に収集されてきた情報の体系化、論文化に取り組んだ。まず本研究の理論的な基礎となるリード・ユーザー論(ex.von Hippel,1986)に関する文献展望を行うと同時に、その対抗理論であるユーザー・コミュニティ論(ex.Howe,2006)との比較検討を行った。近年のユーザー・イノベーション研究がユーザー・コミュニティ論をベースとしたものに偏るなか、リード・ユーザー論の重要性や今後の発展可能性、さらには発展させるにあたっての課題を導出することができた。 つぎに、これまで断片的におこなっていたフィギュアスケートのトップアスリートによる用具開発に関する事例情報について、メーカーや協力企業への追加のインタビュー調査を加えその全体像を把握する作業をおこなった。開発当事者だけでなく、その周辺からの情報を付加することにより、リード・ユーザーを中心とした製品開発グループとその成立過程、モチベーションに関する仮説を導くことができた。 この2つの研究結果は日本マーケティング学会の学会誌『マーケティングジャーナル』において、「リード・ユーザーとメーカーによる共創型製品開発」(2019年9月)として発表した。さらに世界的なユーザー・イノベーション研究学会「Open and User Innovation Conference 2019」(オランダ ユトレヒト大学)に参加し、先端の研究動向の調査を行うとともに、本研究の発展可能性や共同研究についても海外の研究者と意見交換を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の研究計画通りに、文献研究とインタビュー調査、さらには次年度に向けたインタビューリストの作成を進めることができた。研究成果は日本マーケティング学会の学会誌「マーケティングジャーナル」に招待査読論文として発表することがでいている。 また研究を進めるにあたって協力を依頼していたフィギュアスケートの五輪代表選手との関係は、研究活動はもちろんのこと共著論文の執筆など非常に良好であり、今後進める他競技のインタビュー調査実施に向けた準備も順調である。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、2つの事例研究を実施する予定になっている。 1つ目は、今年度行ったフィギュアスケートのブレード開発において、そのイノベーションを採用した選手としなかった選手を分けた要因に関するものである。イノベーションの普及理論をベースに、理論と事例両面から研究を行う。 2つ目は、アスリートが用具開発に取り組む動機に関する研究である。同じ状況に置かれながら、用具開発まで踏み込んだアスリートと踏み込まなかったアスリートの違いを、ブレード開発だけでなく他の競技分野への事例研究を通じて行う。 両研究とも、すでにインタビュー対象は絞り込まれてアプローチを始める段階になっていたが、新型コロナウイルスの影響で、予定していたアスリートへのインタビュー調査のメドが立たなくなっている。今後は遠隔でのインタビュー可能性を模索するため、手法だけでなく方法論の検討、開発にも着手する必要があると思われる。
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Causes of Carryover |
おもに名古屋地域で予定していたインタビュー調査が、対象者の協力により同日で実施することが多くなり、当初計上していた交通費や宿泊費を圧縮することができたため未使用額が増えている。 次年度は、あらたに調査対象となる他競技のアスリートが全国各地で活動しているため、そちらへの移動経費として計上する予定である。また新型コロナウイルスの影響で対面型インタビューが難しい場合、遠隔調査に向けたシステム導入の経費が増額する可能性もある。
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Research Products
(3 results)