2021 Fiscal Year Research-status Report
旅客流動データを用いた空港の非航空系収入に影響を与える要因に関する定量分析
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19K01972
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Research Institution | Kindai University |
Principal Investigator |
横見 宗樹 近畿大学, 経営学部, 教授 (20388424)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 空港経営 / 非航空系事業 / LCC(Low Cost Carrier) / 旅客流動 / 航空機の座席等級 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、旅客流動データを用いて空港における非航空系収入に影響を与える要因を明らかにすることである。その特徴(新規性)は、①非航空系収入を構成要素(商業施設のテナント収入、駐車場収入、施設賃貸料収入)ごとに分割して分析する、②旅客の流動データを用いて、旅客の「発地空港」が与える影響についても分析する、ことである。これにより、効率的な空港経営に対する示唆と、これに基づく望ましい空港政策について提案することが期待できる。 一昨年度は、旅客の「居住国」に焦点を当てて分析をおこなったが、その結果として「旅客の所得水準」に関する考察も必要であることが判明したため、昨年度は、旅客の「座席等級(ファーストクラス、ビジネスクラス、エコノミークラス等)」を所得の代理変数とした分析を実施した。 分析には、2010年~2018年におけるイギリスの25空港をサンプルとしたパネルデータを使用した。被説明変数は「空港の旅客あたり商業施設のテナント(retail)収入」とし、説明変数は「ファースト・ビジネスクラスの出発旅客数の比率」のほか、先行研究に倣ってLCC(Low Cost Carrier)・FSC(Full Service Carrier)と国内旅客・国際旅客に関する変数を用いた。 分析の結果、ファースト・ビジネスクラスの旅客比率の高い空港ほど、旅客あたり商業施設のテナント収入が低くなることが明らかとなり、こうした上位クラス旅客は、空港の商業エリアにおける(空港利用1回あたりの)消費額が相対的に少ない可能性を示唆する結果を得た。 現下のコロナ禍で航空需要の著しい減少に直面する空港事業者にとって、収益機会を拡大するという観点から非航空系事業における上位クラス旅客の消費行動をいかに喚起するか、その方法を模索していくことが重要であると考える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究の分析に不可欠となるOAG社の"Traffic Analyser"(旅客流動データベース)は既に購入済であり、くわえて、分析のためのデータベースの構築も完了している。 研究成果は、2021年8月に、"2021 ATRS World Conference"という国際会議(オンライン開催)で、"The Impact of Passenger Cabin Class on Airport Retail Revenues: An Empirical Study in the UK"というテーマで発表した。 現在までの進捗状況としては、国際会議で発表をした点については「計画どおり」である一方、予定していたイギリスのリーズ大学・交通研究所(Institute for Transport Studies (ITS), University of Leeds)における、共同研究者(Dr.Phillip Wheat(Associate Professor)氏)との対面による研究の打ち合わせがコロナ禍による渡航制限により全く実現しなかったことから、最終的な進捗状況を「やや遅れている」と判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究を国際査読誌に投稿できる水準に引き上げるため、海外渡航が可能な状況となれば、イギリスのリーズ大学・交通研究所において、共同研究者とともに研究の改善・発展に取り組む計画である。 さらには、本研究で使用した"Traffic Analyser"は、航空旅客流動を追跡できるという特性から、とくに医学系の分野では感染症の拡散に対する分析ツールとして利用されてきた。そこで、本研究でも、新型コロナウイルスによるパンデミックが空港経営に与える影響について、可能であれば、"Traffic Analyser"を活用した分析に挑戦してみたい。
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Causes of Carryover |
予定していたイギリスのリーズ大学・交通研究所(Institute for Transport Studies (ITS), University of Leeds)における、共同研究者(Dr.Phillip Wheat(Associate Professor)氏)との対面による研究の打ち合わせがコロナ禍による渡航制限により全く実現しなかったことが、次年度使用額が生じた主な理由である。 次年度は、リーズ大学・交通研究所における研究の打ち合わせに助成金を主に充当し、さらには可能であれば"Traffic Analyser"を用いたデータベースのアップデートに助成金を使用したいと考える。
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Research Products
(4 results)