2021 Fiscal Year Research-status Report
百貨店のダイナミズム―グローバリゼーションとデジタライゼーションの視点から―
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19K01973
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
藤岡 里圭 関西大学, 商学部, 教授 (00326480)
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Project Period (FY) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 百貨店 / アパレル / グローバリゼーション / 小売業 / 産業 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、グローバリゼーションとデジタライゼーションという2つの視点から、小売業態としての百貨店の動態を解明することが目的である。当初の2021年度予定では、デジタライゼーションの進展により、日本の百貨店が競争力をどのように変化させてきたのかについて明らかにするため、中国のアパレル企業やプラットフォーム企業へインタビュー調査をする予定であった。しかし、新型コロナウイルス感染症の拡大により海外調査が困難となり、計画の大幅な変更を余儀なくされた。 そこで、デジタライゼーションの影響を大きく受けていると思われる現代日本の百貨店の競争力を考察するため、日本の百貨店が海外の百貨店からどのように知識や技術を移転したのか、また、その知識や技術が日本でどのように発展してきたのかに焦点を当てて研究することにした。具体的には、二次資料を用いて、百貨店の売上の大部分を占めるアパレル部門が、どのようにして欧米から技術を習得し、日本に適合させながら発展してきたのかについて検討した。その結果、日本のアパレル産業草創期には、女性が活躍していたことと彼女たちが経営にも積極的に参画していたという産業的特質を導出した。女性リーダーの存在が、アパレル産業の発展および高度成長期の百貨店の成長にどのように影響したのかについて、今後さらに詳細に考察する。 なお、本年度の検討内容については、大阪大学で開催されたWorkshop in Economic and Business Historyにおいて、Japanese designers of Western clothes in the initial stage of the apparel industryと題して報告した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の研究計画は、海外でのインタビュー調査や一次資料の収集を基に策定していた。しかし、新型コロナウイルス感染症が拡大し、終息が見通せない中では、計画を大幅に変更し、二次資料を用いた研究に変更することが避けられないと判断した。 しかしながら、百貨店の競争力を検討するために始めたアパレル草創期の女性経営者たちに関する研究には、アパレル産業を日本的経営の視点からだけではなくジェンダーの観点からも捉え直すことができる多くの研究課題が包摂されていることを発見し、結果として本研究全体の射程が広がったと言える。そのため、研究計画の変更に伴う遅れは生じているものの、当初の予定とは異なるアプローチで研究課題を解明する見通しを得ることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
既存研究が女性に注目する場合、安価な労働力としての女性労働者や消費者としての女性への注目が多かった。しかし、洋服が日本に浸透し、既製服製造企業が誕生するアパレル草創期には、阪急百貨店でデザイナーとして活躍した田中千代や、ファミリアを創業した坂野惇子など、アパレル産業の発展に大きく貢献した女性たちがいた。彼女たち女性リーダーについて分析することと、彼女たちのフォロワーについて調査することを通して、百貨店とともにアパレル産業の基盤がどのように構築されたのかを明らかにしたい。 また、女性の仕事であった裁縫が、既製服が普及することによって、どのように他の産業と同様、男性の仕事となったのか、とりわけアパレル企業において女性が経営へ参画することが少なくなっていった背景について検討することを通して、現代の日本企業が抱える女性経営者の少なさを考察する視点を導きたい。
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Causes of Carryover |
当初の2021年度予定では、中国での資料収集およびインタビュー調査の予定や、スペインでの学会報告を予定していたため、海外旅費を多く計上していた。しかしながら、新型コロナウイルス感染症の拡大による本学の活動基準に基づき、期間中の海外出張は断念せざるを得なかった。この点が当初の使用計画通りに実行できなかった理由である。 2022年度は、5月時点では国内出張ができる状況であること、また今後の状況によっては海外出張も可能になる状況であると考えられることから、当初の予定通り、一次資料の収集およびインタビュー調査のために研究費を支出したい。なお、2022年度においても国内外の出張が困難となった場合は、データパッケージの購入等、可能な限り代替し得る資料を購入する。
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Remarks |
ワークショップでの発表:Workshop in Economic and Business History (Osaka University) 発表者:Rika Fujioka 発表タイトル:Japanese designers of Western clothes in the initial stage of the apparel industry
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